final fantasy

□明日も一緒!
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「ねえねえ!見て、カイン!」



「分かったから、そんなにはしゃぐな」







戦いの最中のわずかな休息の時間。

各々自由に過ごしている中

リディアがカインを誘い

二人で宿を抜け出した。

理由はリディアの好奇心によるもの。







「海〜ぃ!」



「・・・海、好きなのか?」



「えっ?う〜ん・・・私、ね

海で遊んだこと、ないの」



「え・・・?」



「私が初めて海に入ったのって

リヴァイアサンに幻界へ

連れて行かれた時だったから」



「ああ、そうか」



「それまで海の水に触れたこともなかったの」







嬉しそうに海水を手で掬う

リディアの横顔を見ていたカインは

何故か哀しげに見えて仕方なかった。

彼女の幼少期を壊したのは他でもない自分。

そんな負い目がいつまでも付きまとっていた。

リディアはカインは悪くないと、そう言った。

それでも、責任感が強い彼にしてみれば

彼女の優しい言葉を

甘んじて受け入れられるわけもなく。

リディアの傍で常に見守り支えることで

償おうとしていた。

だが・・・傍にいるのは

罪の意識からだけでなく。

胸に抱く淡い、けれど確かにある

熱く甘い想いのせい。







「ねえ、カイン!入っても、いい?」



「・・・もうすぐ夕飯だろ?

それにいくら暑くても夕暮れになると肌寒い。

風邪、ひくだけだぞ」



「う〜・・・でもぉ・・・」



「はぁ・・・どうしても入りたいなら

明日にすればいい」



「えっ?」



「しばらくはここにいるようだしな」



「うん!」







嬉しそうに返すリディアに

思わず苦笑してしまう。         

それでも可愛いと思ってしまう

心に嘘はつけない。

カインは駆け寄ってきた

リディアの髪を無意識に撫でていた。

常の戦闘からは想像できない程に

優しく壊れ物のように触れられて

リディアは戸惑いと少しの悦びとで

頬が熱くなり赤く染まっていった。







「ぁ・・・ねえ、カイン」



「なんだ?」



「えっと・・・あの、ね?・・・明日、ね?」



「?」



「もし、明日、ね・・・

用事とか、なくって、ね・・・あの・・・

時間、ある、なら・・・」



「・・・わかった」



「えっ?」



「適当な時間に声、かけてくれ」



「え、えぇ?・・・カ、カイン?

あの・・・私、まだ何も・・・」



「ん?明日、またついてきて欲しいんだろ?」



「なんで、分かったの?」



「・・・くくっ・・・

お前、分かりやす過ぎだ」







心底不思議そうに尋ねてくるリディアに

思わず苦笑を漏らしてしまい

隠すこともせず彼女の額を小突いた。

額をさすりながらも

涙目で懸命に睨むリディアは

カインにしてみれば可愛いだけだった。



明日は朝から彼女に連れ出されるな・・・。

だったら、昼飯を浜辺で食べるのも悪くない。

彼女のことだ

甘いものを欲しがるだろうから

デザートも付けるか。



そんなことを考えながら

カインはリディアの手を優しく握りしめ

夕日を背に宿へと戻って行った。

明日が待ち遠しい。

そんな戦いの最中の日々の一コマ。







「ねえ、カイン」



「なんだ?」



「明日、楽しみだね!」



「・・・ああ。そうだな」










〜END〜


 

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