final fantasy

□星降る夜の贈り物
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「ねえ、どこに行くの?」



「いいから・・・ついて来れば分かる」







陽が沈んですぐのこと。

バロン城のカインの部屋で

彼の帰りを待っていると・・・

カインが部屋に帰ってくるなりいきなり



「ちょっと来てくれ」



と言ってきた。

そして、わけがわからないまま

カインに手をしっかりと握られて

夜のお城から出て・・・

城下町も通り抜けて行った。

前を歩く彼にどこに行くのか尋ねても

何も答えてくれず



「ついて来れば分かる」



その一点張り。

そのまま歩き続けて行くと

小高い丘が見え

大きな一本の樹の下まで歩いて行った。

樹の下まで来ると

ようやく歩みを止めることができた。

弾む息を整えながら振り返ってみると

お城や城下町の明かりが

キラキラと光りとてもキレイだ。







「わぁ・・・キレイ」



「だろ?ここからの眺めは最高なんだ。

陽が昇る朝や昼間も良いが

夜の眺めが一番だ」



「カイン、もしかして

これを私に見せるために・・・?」



「いや・・・これも見せたかったんだが

・・・もっと良いものを見せてやる」



「・・・もっと?」










〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜










「きゃあ〜!すっご〜い!」



「あんまり身を乗り出すなよ」



「キレー!早ーい!すごいねっ!」



「くくっ・・・お前、さっきから

『すごい』ばっかりだな」







カインが見せてくれた、もっと良いもの。

カインの飛竜に乗って見下ろす景色と

間近に迫った星空。

飛空挺からも地上や空を見ていたけど

それとはまた違う。

もっと近くに感じる空は

冬の澄んだ空気の中だからなのか

手を伸ばせば触れることができるような

そんな気がする程に星空を近くに感じた。

そして、飛竜の背に乗って感じる

この風をきる感覚は初めてだ。







「だって、ホントにすごいんだもん!

カイン、ありがとう!

こんな楽しくて、素敵な眺め初めて!」



「ふっ、そんなに喜んでくれたなら

連れて来たかいがあるな。

ところで、今日が何の日か知ってるか?」



「今日?・・・何かあったっけ?」



「やっぱりな・・・今日はクリスマス、だろ?」



「あっ!・・・そっか」



「お前はミストの復興でばたついてたし

俺もいろいろ忙しかったからな」







今日は城下町もいつも以上に賑やかだった。

お店や家の装飾が

すごく派手になっていたのを思い出して

今日がクリスマスだからだと分かった。

でも、最近忙しいからといって

こんな大きなイベントを

忘れるなんて・・・。

少しスピードをゆるめると

カインが振り返ってきた。







「これは、俺からのプレゼントだ」



「そんな・・・

私、何も用意できてないのに・・・」



「言っただろ?俺も忙しかった、って。

今朝気付いたから

こんなものしか思いつかなかった」



「こんなものなんて、言わないで。

私、すごく嬉しいもん」







こんな素敵なものを

プレゼントしてくれたのに

何も返せないなんて・・・

リディアは申し訳なく思った。

今日が終わってしまったら意味がない。

その時、一つだけ

今のリディアにも贈れるものを思いついた。







「・・・うん。

カイン、私からのプレゼント

受け取ってくれる?」



「えっ?」



「よいしょ、っと・・・」



「なっ・・・おい、危ないぞ!」







リディアは飛竜の背に立ちあがり

その状態で手を星が瞬く夜空に翳した。

そして、魔力を調節しながら詠唱した。







「ブリザド!」







イメージ通りある程度大きめの氷の塊を

頭上の更に高い空へと解き放った。

そして、続けざまに次の魔法を放つ。







「ファイア!」







氷を砕くも消し去らない程度の力で

放った炎の後には・・・

月の柔らかな光を受け

キラキラと輝きながら

降り注ぐ氷の結晶。

飛竜の背に乗り空から眺める

この結晶の降る景色はとても幻想的だ。







「えへへ・・・

私からのプレゼント・・・どお?」



「ああ・・・キレイだ、すごく」



「ホント?」



「ああ、さすがだな、リディア・・・」



「うん!・・・きゃっ・・・んっ!」







誉められて

喜んでもらえたことを

噛みしめる間もなく

急にカインの腕の中へと抱き込まれ

そのまま熱い唇で塞がれてしまった。



こんな幻想的な世界に二人きりでのキス。

忘れられない一夜になった。

ねえ、カイン。

来年は忘れずに

ちゃんとケーキもプレゼントも

用意するから。

だから・・・また、この景色を見せてね。

来年も、再来年も、ずっと・・・。











〜end〜


 

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