final fantasy

□依 存
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「はぁ・・・」







任務から帰還して

すぐにとりかかった報告書作成。

普段以上の集中力を発揮させ

1時間足らずで終わらせた。

それもこれも・・・

全てはアイツの為。





報告書を提出した俺は

ガーデン内の廊下を歩いていた。

この三日間一度も触れていない

声さえも聞いていない彼女が

いるはずの場所へと向かって。

人はたった三日間というかもしれない。

だが、俺にしてみれば

三日間というのは

とてつもなく長い時間だった。

彼女といる一日よりも

彼女といない一時間の方が

悠久の時間にさえ思えるのはどうしてなのか。

今だってそうだ。

彼女が傍にいないだけで

体中が落ちつかない。

この腕が、全身が

彼女を求めているのが嫌でも分かる。

一種の依存ともいえる。





中庭へと出てみると

ベンチに座り本を読んでいる彼女がいた。

ふいに急ぎ足になり

彼女へと近寄ろうとしたが。

足が、止まった。



風がふわりと撫でて行き

彼女の柔らかな髪を靡かせた。

そっと髪を抑える白い指先。

微かに見え隠れする滑らかな首筋。

淡く染まった頬が見えると

本の隙間から垣間見えた桃色の唇。



本に集中しているようで

俺が見ていることに気付いていない。

どうして・・・こんなにも無防備なのか。

俺が一瞬で見惚れてしまうのに

他の男が見惚れないはずがない。

こんな所で、周りに人が溢れる中で

どうして無防備でいられる。

少しの苛立ちを持って

今度こそ彼女のすぐ傍にまで行き

隣りへと腰かけた。







「っ!?ぁ・・・スコール」



「こんな所にいたのか」



「うん、今日はいいお天気だからね」



「・・・ああ、そうだな」



「?・・・ん?」



「・・・何だ?」



「ん〜?」



「(何なんだよ一体)・・・どうした?」



「スコール・・・何か、あったの?」



「え?」



「何か、機嫌悪い?」



「(見せないようにしてるのに・・・

よく分かるな)・・・別に」







表面上は分からないように隠していた。

だが、彼女には分かってしまうのだろう。

だったら不機嫌なその理由も

分かってもらいたいものなんだが。

腕を組みそのまま背もたれに体を預けると

フイと視線をあらぬ方へ向けた。

そんな態度をとってから・・・

何と子供じみた真似をしてしまったのかと

湧きあがる後悔に焦る。

せっかく会えた彼女と

こんなくだらないことで喧嘩もしたくない。



すると、ふわりと温かいものが腕に触れた。

ジャケット越しにも分かるその温もりは

彼女だからなのかもしれない。

ゆっくりと視線を戻すと

彼女が柔らかな頬笑みを向けてくれていた。

ずっと見たかったその笑顔

触れたかった温もりを感じて

堪らなくなった俺は

無意識のまま彼女を抱きしめていた。







「?スコール?」



「・・・会いたかった」



「・・・うん」



「・・・声、聞きたかった」



「うん」



「・・・触れたかった」



「・・・ふふっ・・・どうしたの?」







彼女も俺の背に手を回しながら

楽しげな声で耳元に囁きかける。

心地いい声音と甘い香りに

やっと彼女を感じているのだと

胸のあたりが温かくなっていく。

彼女の首筋に顔を埋め

より香りを堪能しながらそっと呟いた。







「・・・リノア不足だ」



「!ぇ、と・・・私も、スコール不足」



「・・・なあ、俺の部屋、行かないか?」



「・・・行く」







そう小さく返してくれた答えに満足して

ようやく緩めた腕の中から覗く彼女へ

今日初めての笑顔を返せた。










〜end〜


 

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