final fantasy

□怪 我
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「・・・っく・・・ひっく・・・」



「・・・はぁ」







いつものことだというのに・・・。

目の前で泣き続けるリノア。

どうしたものかと考えながら

また、小さく溜め息が出た。



事の発端は先の戦闘でのこと。

この辺りのモンスターはそこまで強くもない

所謂低レベルなモンスターだ。

今の俺達には肩慣らしにもならない。

それでも攻撃を受ければ怪我もする。

それなりにダメージも与えられる。

戦闘では当たり前の話だ。

俺とリノア、ゼルが戦っていた時

残り一匹のモンスターに止めを刺すべく

ゼルが攻撃をしようとした。

その時、最後の力を振り絞ったのだろう

反撃にでたモンスターの攻撃を

ゼルが真っ向から受けてしまった。

すかさずリノアがケアルガをかけ

俺が代わり止めを刺した。

それで・・・終わるはずだった。





ゼルには最後まで油断するなと注意をして

ガンブレードを仕舞おうとした。

すると急に左手を掴まれた。

驚いて見るとリノアが若干青ざめた表情で

掴んでいる俺の手を見つめていた。







「スコール・・・怪我、してたの?」



「・・・大げさだ」



「っ・・・大げさじゃない!

だって、擦り傷なんて程度じゃない・・・」







確かに先程ゼルが受けた反撃の被害を

俺も被っていた。

だが、回復魔法や道具を使う程ではなく

日常動作や戦闘に何ら影響はない。

自分自身のことだからよく分かる。

だが・・・リノアにはそうではないらしい。





そこでいくら説明しても納得せず

ラグナロクに戻ってからも言い合っていた。

それでも納得しないリノアは

ついにはこうして泣きだしてしまった。

さすがに驚き

まさか俺が怪我をしたくらいで

ここまで大泣きするとは思っていなかった。

コレには他の仲間も驚いたようで

何事かと覗きにきた。







キ「ちょっと、どうしたの?」



「っく・・・スコ〜ル、が・・・

怪我、して・・・言わない、もん・・・」



セ「まったくわからへん・・・

はんちょ〜、何かしたんちゃうの?」



「俺は何もしていない・・・

いや・・・はぁ・・・しなかったからか」



ア「何なに?スコール、リノアとまだなの?」



「今はそんな話、してないだろ」



「ぅ・・・っく・・・」



ゼ「んな冗談はいいからさ

リノア、どうしたんだよ」







泣いてるリノアに代わりに

俺が説明をすると

皆呆れつつ、冷やかしつつ

勝手にしろと言わんばかりに

部屋を出て行った。

残された俺とリノアは・・・。







「・・・リノア」



「・・・・・・」



「怪我なんて、いつものことだろ?」



「・・・違う、よ」



「え?」



「・・・いつもは、怪我をした時に

ちゃんと気付けてるの、私。

でも、今日は気付かなかった・・・」



「・・・ゼルの方がひどかったんだ

それも仕方ないだろ」



「それでも!

・・・スコールが痛い思いしてるのに

すぐに気付けなかったことが、悔しくて」







そう言ってまた涙を浮かべるリノア。

何だろう・・・どう言えばいいのか

今泣いているのは俺を思ってのことで。

怪我をした時に気付くということは

いつも俺を見てくれているということ。

今日はすぐに気付けなくて悔しいと

そう言って涙するリノア。

ああ・・・こんなこと、思ってはいけない。

そう分かっているのに。

どうしても思ってしまう。

目の前の、リノアのこの涙が

堪らなく嬉しい、と。



どうしようもない程に愛しく想う

この感情をどう表せばいいのだろう。

そっと手を伸ばし涙で塗れる頬を拭う。

するとゆっくりと視線を上げ

俺を真直ぐに見つめる。

黒曜石のような瞳。

潤んだそれは俺の心まで

射抜く程に真直ぐで。

零れる滴を辿るように口づけて

舌を這わせて行く。

目尻で音をさせて唇を離すと

目を見開き真っ赤になった彼女と

しっかりと目があった。

そんな表情にまた喜びが溢れ

自然と頬が緩む。







「・・・涙、止まったな」



「い・・・ぃ、いきなり・・・」



「嫌だったのか?」



「ぅ・・・イヤ、じゃ・・・ない」



「ふっ・・・リノアの味がした」



「!?・・・スコール・・・エッチぃ、よ」







弱々しい呟きと共に

俺の腕の中へ寄り添う彼女を

優しく抱きしめる。

彼女の笑顔はもちろんだが

怒った顔も泣き顔にさえも

悦びが溢れるとは思わなかった。

こんなにも愛しく想える人は

彼女、ただ一人しかいない。









〜end〜


 

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