final fantasy

□音
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穏やかな昼下がり。

午後からのスケジュールは

これといって無い。

静かな室内に外から微かに聞こえる

風に揺れる葉の音と楽しげな話声。

ベッドでシーツの波に埋もれながら

聞こえる音に意識を持っていかれていた。



トクン・・・



耳に心地良い音。

後ろから抱きしめられる

その胸から聞こえる心音。

温もりに身をまかせ微睡をたゆたう。

自分の鼓動と重なり合うその音は

幸福を感じさせるには十分で。

回された力強い腕に

そっと手を添える。

もう一方の手を

支えてくれている手の甲の上から重ねる。



大きく骨ばった手は

いつも武器を手に戦い

最近ではパソコンのキーボードを

叩くことが増えてきて

ペンを持つことも多い。

自分の手と比較しても

全然大きさの違うその手は

二人きりの時には

壊れ物を扱うかのように

とても優しく触れてくれる。

30分前まではパソコンと向かいあっていた。

今は・・・

こうして私を抱き込みながら

眠りの世界にいる。

四日ぶりなのだから

いろいろ話したいこともある。

でも、こうして触れあっている時間も

とても大事なものだから。



トクン・・・トクン・・・



聞こえる穏やかな音色に

愛しい人が今傍にいるのだと実感できる。

傍にいて、触れて、感じれる。

そのことがこんなも幸せなのだと

彼が帰還した時にはいつも思う。



起こさないように

そっと体の向きを変え彼と向かい合う。

自分よりもキレイな寝顔。

長い睫毛と綺麗な肌。

誘われるように触れてみて

その温かさに鼓動が少し跳ねる。

今は閉じられている薄い唇に目がいき

いつもあの溺れるように

深く熱い口づけを

もたらされていることを思い出し

どんどん顔が熱くなっていく。

一人で何を考えているのかと

何だかヒドく厭らしいような気がして

彼にもっとすり寄った。

すると、彼の腕にもっとっと

引き寄せるように抱き寄せられた。







「っ・・・スコール?」







起きてしまったのかと伺ってみるも

寝息を立てているのを確認し

ほっと安心した。

やっと休めるのだから

いつも忙しくしている彼には

こうした休息の時間も必要。

だから自分がそうであるように

彼にも幸福と安心を感じてほしくて

精一杯腕を回して

抱きしめ返した。





お互いの穏やかな音が重なって

耳からと肌から感じられるその奏でに

私も彼と同じ世界へと旅立った。










〜end〜


 

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