final fantasy

□月光に咲く花
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はっと気づけば

ぼんやりとし過ぎていた為

目の前の焚き火が消えかけていた。



久しぶりの野宿。

ここしばらくは

街や村が連なっていたのか

宿で休めていた。

だが、今日はどうしても

陽が沈むまでに辿りつくことができず

こうしてテントを張ることになった。

今行動を共にしているのは

エアリスとユフィ。

エアリスは「仕方ないよ」と

ユフィは・・・予想通り駄々をこねた。

まあ、それは(不要になった)マテリアを

宛がい言いくるめて何とかおさめた。

後で気がついた時の対策も

考えておかないといけないが。



そんなこんなで今は見張り中。

男の俺がするのは当然だと思うし

別に異論はない。

ただ、ユフィからさも当たり前のように

見張りを押しつけられるような形に

若干苛立ちを感じたが・・・

エアリスの労いの言葉に癒され

何とか心を落ちつかせることができた。





火を絶やさないよう枝を足していく。

小さかった炎は

また元通りの大きさとなった。

枝を半分に折り

炎の中に投げ入れて

そこで、何となく周囲が

明るいような気がして見渡した。

普段の宵闇よりも

僅かに周囲が確認しやすい。

この焚き火が原因でもなさそうで

不思議に思っていると・・・。







「クラウド」



「っ!・・・エアリス?」



「・・・どうか、したの?」



「はぁ・・・その言葉

そっくりアンタに返す。

寝なくていいのか?」



「うん・・・今日は、ね

月が明るくて、なかなか寝れなくて」



「月?」



「そう。気づかない?

いつもより、明るい、でしょ?」



「ああ・・・それは気づいたけど

月が、明るいからか?」







半信半疑で見上げた夜空。

確かにいつもよりも明るく

はっきりとした光を纏う

満月が浮かんでいた。

それはまるで降り注ぐかのようで

柔らかく、包み込むような

でも、どこか切なげな光。

しばらく見入っていると

隣りにエアリスが座った。

その気配に気づかない程に

月を見ていたのかと

内心自分に驚いていた。



エアリスと行動を共にすることが増え

こういうことが多くなった。

今までの自分では考えられなかったこと。

足元の小さな花や

頭上から聞こえる鳥の囀り

木々の間から漏れ出る陽光

そんな些細なことを

気にかけるようになった。

今だってそうだ。

満月の光なんて

以前の俺だったら気にもとめなかった。

だが、それを気にできるようになった

そのきっかけは、他でもないエアリスだ。







「・・・キレイ、ね」



「ああ」



「・・・ねえ、クラウド」



「何だ?」



「この、月の光を見て、ね・・・

何を思った?」



「え?」



「・・・ゴメン、ね?

変なこと、聞いたね」







少し照れているのか

仄かに頬を赤くさせるエアリス。

彼女が何を意図して聞いてきたのか

正直見当もつかない。

だが・・・彼女には

「興味ない」で済ましたくない。

しっかり自分の言葉で考えや

それこそ気持ちを伝えたいと思ってる。

いつも何かを与えてくれる彼女にだから

俺も何かを返したいと思う。







「・・・何か、というわけじゃないが

俺は・・・アンタが頭に浮かんだ」



「え?」



「この柔らかい光の感じが

俺のアンタに対する印象と、似てるから」



「私・・・こんなに優しくない、よ?」



「・・・俺にはこの月の光

そのままに思うんだ。

それを否定されたくない」



「・・・え、とぉ・・・

あ、ありが、とう・・・?」



「・・・・・・い、いや・・・」







何を恥ずかしいことをしているんだ。

自分で自分を呪いたい。

ただ・・・彼女の前では

どうも取り繕うとか

ごまかそうとできなくなる。

あの瞳を見ていると

吸いこまれそうになって

自然と思ったことを

そのまま言葉にしてしまう。

普段の俺ではないようで・・・

でも、それが嫌だとか

受け入れたくないわけではなくて。

ただ、戸惑ってしまう。

俺らしくない、と

変に思われるんじゃないかと。







「ふふ・・・クラウドって

たまに、そういうこと、言ってくれるね」



「え?」



「ありがとう、クラウド。

私、ね・・・他の誰よりも

クラウドに、そう言ってもらえたことが

とっても嬉しい」



「っ・・・・・・そう、か」







本当に、直視できない程に

眩い笑顔でそんなことを言うから。

気のきいた言葉を返せなくて。

でも、俺の言葉で

こんな笑顔になるのなら

幾らでも伝えたいと思ってしまった。

もっと、その笑顔が

見たいと思ってしまった。

こういう感情を何というのか。

よく分からない。

分からないが・・・

彼女が俺の中で

特別な存在になっていると。

最重要人物となっているんだと

そう理解できてしまった。





微妙な間をあけて座る俺とエアリスを

頭上に浮かぶ満月は

笑いかけるように

柔らかで優しげな光を

注いでくれていた。










〜end〜


 

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