final fantasy

□拠り所
1ページ/1ページ







視界を覆い隠すような

巨大な建物や半透明のプレート。

見上げる先には

今まで見たものと変わらない

大きな空が広がっているのに。

茜色に彩られた空は

温かさと少しの切なさをもって

周囲をその色に染めていく。







「リノア」



「・・・なぁに?」



「・・・どうかしたのか?」







ふいにかけられた声の持ち主は

確認するまでもなく

誰なのかは分かっている。

だから、振り向くことをしなかった。

今のこんな顔を見られたくない。

彼の前では毅然としていたい。

そう願って、そうありたいと

努力しようと思っているのに。

そんな私のことなど構うことなく

彼の力強い腕に抱きこまれ

背後から心地よい温もりが伝わってくる。







「っ・・・大丈夫、だから」



「・・・・・・」



「ね?別に、何もない・・・」



「・・・何もなく、ないだろ

・・・これ」



「っ!?・・・あ・・・」







彼に指摘され初めて

自分が涙を流していたことに気づく。

私がぼんやりしていたことに

大した意味もなく。

ただただ、漠然とした不安に

どうしようもなく心が痛んで

これからの皆のことを思うと

どうしようもなく哀しくて。

そんな状況をどうにもできない自分が

どうしようもなく情けなくて。

それでも彼に支えられ

心が震えるほどに喜びを感じてしまう

そんな私の甘さに腹が立つ。



強くありたいのに

実際の自分の弱さに

不安も全部が呑まれてしまいそうで。







「・・・無理に笑え、なんて言わない。

だが・・・そうして泣くまで

我慢をするな」



「・・・ごめん、なさい」



「謝らなくていい。

ただ、俺が・・・俺が嫌なだけだ。

リノアが悲しんだり、傷ついたり

そんな時にこうして宥めたり

抱きしめてやることもできないのは

絶対に嫌だから・・・」



「・・・今でも、充分だよ?

ずっと、傍にいてくれるし

いつも見てくれてる、でしょ?」



「・・・それでも

俺はやっぱり鈍いから

リノアの心に機敏に

気づかないかもしれない。

だから・・・俺には隠さなくていい。

我慢せずに、何でも言ってほしい」







どうして、こんなにも優しいんだろ。

どうして、こんなにも

私を想ってくれるのかな。

嬉しいのに・・・

嬉しいはずなのに涙が止まらない。

ねえ、スコール。

私、今でも十分過ぎる程に

貴方に甘えて、我儘を言ってる。

本当なら、ね・・・

この世界の為にも、皆の為にも

私は封印されるべきなのに。

それでも、貴方の傍を離れたくない。

その気持ちが強過ぎて

どうしても抑えきれなくて。







「っ・・・私・・・

我儘、言ってるんだよ・・・」



「・・・どんな?」



「ホ、ント・・・は・・・

・・・っ・・・こんな・・・

恐ろしい力を持った私は・・・

皆の傍に、いちゃいけないのに

・・・それ、なのにっ・・・

私、スコールの傍にいたい」



「・・・それの、どこが我儘なんだよ」







どこか切羽詰まったような声音に

少しだけ振り返るのと同時に

スコールに正面から抱きしめられた。

先程よりも温かさが増して

トクンと響く心音に

私の心も落ちついていく。







「それを我儘だって言うなら

俺はもっと我儘だ」



「そんな、こと・・・」



「あるんだ。

俺は・・・リノアを離したくない。

リノアが無事なら世界なんて

どうだって良くて

リノアと一緒にいられるなら

俺は全てを敵にまわしてもいい。

そんなことを、ずっと思ってるんだ」







思いがけないスコールの気持ちに

私は喜んでしまった。

心の底から歓喜に震えてしまった。

スルリと濡れた頬に

大きな手が添えられて

ふと影がさしたから瞳を閉じると

ゆっくりと唇が重ねられた。

数え切れない程に交わした口づけに

私はいつも救われる。

心が満たされて前を向ける。







「それでも・・・

俺はリノアとのこれからの為に

アルティミシアと戦うんだ。

全てはリノアの為だ」



「・・・ありがとう、スコール」



「不安な時

どうしようもなく泣きたくなった時

・・・迷わずに、俺を呼んでくれ」



「・・・うん」







彼の腕の中で静かに頷くと

抱きしめる腕にまた力が加わった。





未来の保証なんてない。

明日、どうなるかなんて

誰にも分からない。

それでも・・・

私は貴方と共に歩いていくことを

見失わないように

強く信じているから。

貴方も同じように望んでくれるから。

それだけで、私は

今までよりも強くあれるから・・・。












〜END〜


 

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ