etc

□その温かな瞳で見つめて
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「・・・か・・・克彦、さん・・・?」         

         

「どうした?」           

        


「ぃ・・いえ・・・あ、あの・・・」         

         

         

         



















言い淀む私をさっきから抱きしめ続けている人。





私の・・・恋人です。



出会った頃は、まさかこんなに

親密な関係になるなんて夢にも思わなかった。



でも・・・どんなに冷たくされても

意地悪なことを言われても

彼の本当の優しさを知ってしまった。





その、柔らかな瞳を・・・温かな手を

彼の優しさと温もりを知ってしまったから

惹かれずにはいられなかったの。             

            

          

          



















「・・・まったく、いつまでたっても

慣れないな、お前は」          

         


「うぅ・・・だって、こんなふうに

抱きしめられたら・・・誰だって緊張します!」         

        

「まぁ、毎回そんな風に

初さを見せられるのも悪くはないが・・・

ずっと緊張されるというのも傷つくぞ」         

         

         

           



















思いもよらない彼からの言葉に

私は驚き慌てて彼を見上げた。



しかし、そんな言葉とは裏腹に

彼の表情は私を見下ろしながら

面白いものを見るかのように

その口端を上げ美麗な笑みを浮かべていた。



思わずその表情に見惚れて

ドキリと胸を高鳴らせた。           

         

       

          



















「・・・・・やっぱり・・・

慣れるなんて、無理、です」         

         


「・・・・・」         

        


「だって・・・・・

こんなにドキドキしてるのに・・・

慣れるなんて、無理に、決まってます」          

          

          

           


















私が彼の胸に顔を埋めて

呟くように想いを告げると

頭上から彼の小さく、でも深い溜息が聞こえた。





怒らせた?と思い、恐る恐る彼を見上げた。            

          

         

           


















「ぁ・・・克彦、さん?」          

        


「はぁ・・・本当にお前は・・・」          

            

          

            


















私を見下ろしながら何故か苦笑し

そう呟くと私を抱きしめてくれている腕に

より力が加わるのを感じた。



そして、私の耳元に唇を寄せて・・・





『どうしてそんなに、いちいち可愛いんだ?』





そんな甘い言葉を吹きかけてきた。



真っ赤になる私を見てくつくつと笑う彼は

やっぱり意地悪だと思う。



それでも・・・

この腕の中に抵抗なくいるのは

彼のことが・・・克彦さんのことが

何よりも大切で大好きだから。





彼にも私のドキドキを

少しでも分かって欲しくて

彼の首に腕を回し背伸びをして耳元に囁いた。





精一杯の愛をこめて・・・。         

          

         

          





「克彦さん・・・愛しています」

















 

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