etc

□好意故の行為
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「!殺生丸さまっ・・・」



「体が冷えている」







するすると帯が足元へと落ち

はらりと肌蹴る衿を

きゅっと握るように掴み

男の手を拒む。

臆することなく大きな手は

押さえる娘の下方の合わせ目へ

強引に滑り込んでしまった。

何度も触れ、口づけた太股は

その肌触りといい、感触といい

飽くことなどない。

いよいよ本格的に情欲が湧きあがり

頭上から感じる視線に

熱と色が含み始めた。







「早く温めねばならぬな」



「だ、だから、温泉に・・・」



「その為の湯浴みならば必要ない」



「え・・・?」



「私が温めてやろうと言っている」



「っえぇ!?あ・・・それ、って」



「・・・いい加減、黙らぬなら

その口を塞いでしまうぞ」



「なっ・・・!?・・・ん、ぅ」







とんでもないことを

次から次へと発せられ

体が熱くなるどころか

頭の中も混乱し始めて。

未だ生娘というわけでもなく

この男と触れ合ったことなど

もう数えることが億劫な程。

それでもなお慣れずに

こうして初心な反応を示す娘を

男は大変好ましく思っている。



抑えきれなくなり

娘のふるりと震えた唇に

冷えた薄い唇が重なる。

熱を奪い、与える内に

だんだん触れた部分が熱くなる。

そうなると娘の中から

抵抗するという言葉が

綺麗に消えうせてしまうのだ。



しっかりと押さえていた合わせ目は

ついにはらりと肌蹴てしまい

男の手が滑るように

肩を撫でるのと同時に

とうとう着物は地へと舞い落ちた。

月光のみの明かりの中

視界に捕えた娘は

その肌を白く輝かせ

色づく頬と唇と

色に塗れた瞳が

ひどく扇情的である。

唇を離せば名残惜しげに

甘い吐息が漏れ出た。







「頬は温まったようだが

・・・体はまだ足りぬようだな」



「ん・・・や、だぁ・・・」



「私を拒むつもりか?」



「だって・・・閨、以外なんて

・・・恥ずかしい」



「先刻も言ったはずだ。

誰も見てはおらぬ・・・

ここにはお前と私、二人のみ

何も気にする必要はない、安心しろ」







そう言った男の微笑は

とても美しいもので。

そんな笑みを目にした娘は

よりいっそう全身を熱くさせた。

そのような表情で言うなど

娘に拒める術などあるはずもない。







「殺生丸、さま・・・」



「お前が拒むなら、無理強いはせぬ」



「え・・・?・・・ぁ・・・

だ、だめっ!!」



「・・・どうした?」



「あ・・・・・・あ、の・・・」



「・・・言え。

はっきり言わねば分からぬだろ」







分からないはずがない。

娘の心内を知りながらも

言葉に出させようとしている。

戸惑う娘の反応を楽しむ半面

言葉にして聞くことで

娘の意思をはっきりと実感したいと

そういう思惑もある。

だが、純粋な娘は

男のそんな考えになど

気づくはずもない。

この娘にとって男は絶対的存在。

口では拒んでみせようとするも

言わば、"嫌よ嫌よも、好きのうち"

というわけである。

求められれば応えてしまうし

何より娘もまた求めているのだ。







「あの、ね・・・私・・・

殺生丸さまに、触れてほしいの」



「・・・・・・」



「だから・・・あのっ・・・

わ、私の、体を・・・

温めて、ください」



「・・・・・・ふっ・・・

お前がどうしてもと言うならば

仕方がないな」







娘からの言葉に

とても満足げな表情を浮かべ

その笑みでまた

娘を虜にする。



日頃、無表情だの、冷徹だの

何を考えているのか分からないだの

言われているこの男。

しかし、今はどうだろうか。

娘の前ではこんなにも表情豊かで

何と分かりやすいことか。

本当にこれが戦国最強と謳われる

西国の大妖なのだろうか。

そう疑わずにはいられないが

・・・つまるところ。

好いた雌を前にすれば

人だろうと、物の怪だろうと

妖しだろうと、大妖だろうと

生きるモノ全て同じなのだ。

この男とて興味のない様相でも

その胸中はこの娘を求めて止まない。







「あっ・・・あ、の・・・」



「・・・まだ何かあるのか?」



「う、ううん・・・あの、ね・・・

今日は、外、だから・・・

あんまり、激しくしないで、ね?」



「・・・・・・・・・善処しよう」







その間がとてつもなく気になったが

幾らもしない間に男からの

口吸いを受け惑わされてしまい。

娘の艶声と吐息が

周囲の空気を震わせるように

響いていた。

それに呼応するかの如く

未だ白い月を映す水面も

ゆらりと揺らめいたのだった。










〜完〜


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