etc

□あなたに染まる
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*公式と異なります





「えっ・・・クリスマス?」



「ああ」         







ソードと二人

身を隠すような生活が始まって

数ヶ月たったある日。

足りなくなった食料の

買い出しに出ていたソードから

あまり馴染みのない言葉を聞いた。







「クリスマスって、なに?」



「えっ・・・知らない、のか?」



「・・・うん」



「ああ・・・そうか。

クリスマスをそれらしく

過ごしたことなんてなかったからな」



「それは、知っていないと

いけないこと、なの?」



「そういうわけでは・・・

クリスマスというのは

簡単に言えば神の子である

キリストの誕生を祝う日だ。

だが、現代では家族や恋人

友人と過ごす日と

解釈されているようだけどな」



「そんな日があったんだ・・・」



「・・・小さい頃から

そういう日をお前と

過ごすことはなかったからな。

知らなくて当然かもしれない。

すまなかった」



「ううん。

今教えてもらったから、いいの」







私の知らないこと

まだまだたくさんある。

今まで私は知ろうとしなかったから

知っていくことができる今が

こんなにも満たされて

こんなにも嬉しいことだなんて。



初めて会った時から

今でもずっと私にはソードだけなんだ。

こうして私に教えてくれるのも

導いてくれるのも。

私の背を押してくれるのも

必要としてくれるのも。

全部ソードだけなんだ。







「ねえ、ソード。

クリスマスはどうやって

過ごしたらいいの?」



「・・・やりたいのか?」



「うん」



「ふっ・・・そう言うだろうと思って

いろいろ買ってきてある。

これが部屋に飾るもの

こっちはクリスマス料理の

作り方の本と材料。

それからこっちが・・・」







次々といろんなカラフルな飾りや

キレイに装飾された木

それから料理の本にいろんな材料。

ソードは自分で料理を

したことがないって言っていたから

きっと本に載っている料理の材料を

買える限り買ってきてくれたんだ。

手持ちのお金を考えると

本当なら余裕はあまりないはず。

それなのに・・・。







「ソード・・・」



「どうした?」



「ありがとう・・・私のために」



「・・・気にしなくていい。

俺もお前とクリスマスを

過ごしたかった。

ハンターや賞金首とか

そういうことを考えずに・・・

恋人として、それらしく

過ごしてみたかった」







普段見れない優しい笑顔で

そんなことを言って。

私の胸が締め付けられて

泣きたくなるような・・・

それでいてソードへの

大好きという気持ちが溢れそうで。

どう表現したらいいのか分からなくて

部屋に飾りつけを始めた

ソードの背に抱きついた。







「!・・・どうしたんだ?ナスカ」



「ソード・・・どうしよう」



「何だ?嫌、だったか?」



「違う・・・ソード、好き」



「えっ・・・」



「好き・・・大好き・・・どうしよう」



「何が、『どうしよう』なんだ」



「好き、過ぎて・・・

大好きが一杯で

どうしたらいいのか分からない」







本当に困ってしまって

助けを求めるように

振り返ってきた

ソードの顔を見上げた。

多分、他の人が見たら

普段と変わらないと

思うような表情だけど・・・

微妙な変化だけど

何かを耐えているような、そんな表情。

よく分からないけど

きっと私が困らせてしまっているんだ。







「・・・ごめんなさい、ソード」



「ナスカ・・・」



「えっ・・・んっ!」







これ以上ソードを困らせたくなくて

背中から離れようとすると

私の身体が強い力に引っ張られて

気付くとソードの腕の中にいた。

そして、何か温かく柔らかいもので

唇を覆われた。

間近にあるソードの顔で初めて

キスされているのだと分かった。

初めてキスをされてから

もう数え切れないほどキスをした。

それなのに全然慣れることがなくて

余裕のあるソードとは違って

私はいつも緊張してしまう。



それでも、心が、身体が・・・

まるで浸食されていくかのように

どんどんソードで染まっていっている。

きっと・・・

これが「愛」なんだと思う。

今日が特別な日というのなら

ソードと過ごせることに

喜びを感じて・・・

そっとソードに身を委ねた。







〜END〜


 

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