etc

□持て余す情欲
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「んっ・・・は、ぁ・・・」



「・・・声出すなよ?

誰かに気付かれる」







街の喧騒を背に路地裏の建物の間で

俺は、ナスカに何をしているのだろう。



ただ、変装ともいえないような身なりで

二人で買い物に出たのがつい先刻のこと。

そして、ふと隣の彼女に目をやり

視線に気付いた彼女と目があった

その瞬間。

何故か理性が崩れてしまい

気付けば彼女の手を掴み

薄暗い路地裏へと連れて来て・・・

そのまま狭いビルの間へと連れ込んだ。







「んっ、ぅ・・・あ・・・

・・・や、ぁ・・・ソ・・・ド・・・」



「声・・・聞こえるだろう?」



「ふぅ、ん・・・ぅん、ん

・・・あ、ぅ・・・」







すぐ傍に人の気配が

行きかっているのだから

こんな風に物音や

声を出すのはマズイ。

それにこんな風に抱きあっている所を

見せる趣味なんてない。

でも、嫌がる彼女の泣き顔と

その甘い声に

ゾクリとする程に欲情している。



ここが外で目立ってはいけない俺達が

誰かに見られてしまうようなこの状況で

こんな風に密着し口づけあっている。

その事実が彼女を、俺を

少なからず興奮させているのだろう。



こんなことをしている場合ではない。

それは、よく分かっている。

それでも時折、どうしようもなく

触れたくて、触れたくて

どうしようもない時がある。

特にきっかけも理由もない。

ただ、ナスカがそこにいるから。

・・・それだけだ。







「・・・ゃ、あ・・・

気付かれ、ちゃ、ぅ・・・あ・・・」



「・・・だったら

お前が声を出さなければいい」



「ん・・・ム、リぃ・・・

ん・・・んぅ、ん・・・」







次第に聞こえるものが

彼女の甘い啼き声と

淫らな口づけの音だけとなった。



他人というのは言う程も

周りのことなんて気にしていない。

これだけの人が行き交う中で

こんな片隅を気にしながら

歩いている人間など

微々たる数にすぎない。

ましてや男女の情事に割って入る

酔狂な人間などそういないだろう。







「ど、して・・・ソー、ド

・・・ん・・・」



「・・・触れたい、と・・・思った

・・・それだけだ」



「ん・・・あ・・・・・ここ・・・

外・・・恥ず、か、しぃ・・・」



「・・・じゃあ・・・二人きりに

なれるところに、行くか?」







さすがにこれ以上は危険だと判断し

彼女に問いかけてみると

困ったように顔を赤らめながら頷いた。

そんな小さな仕種一つで

俺を翻弄するのだから

どうしようもない。







「・・・敵わない、な」



「えっ・・・?」



「・・・いや、何でもない。

・・・さっさと買い物、済ませるぞ」



「・・・ソードが、急に

こんなこと・・・するから・・・」



「・・・買い物が済んだら

さっさと帰って・・・

続き、するからな」


  
「え・・・つ、続き!?って・・・」



「・・・ふっ・・・」







俺の言葉に慌てふためく彼女。

俺にはこんな風にいろんな顔を

見せてくれるようになった。         

それが、俺だけが特別だと

言ってくれているようで

言いようのない程に嬉しい。

俺がこんな事を想うのも彼女にだけ。

特別な存在があることが

こんなにも喜びを感じるものとは

思わなかった。



買い物の続きのため歩き始めた俺は

ナスカの手をとりながら

頭の中には先程の彼女の泣き顔と

煽るような甘い声が響いていた。



早く触れたい。

余すことなく、その奥深くにまで。

ただ、その欲しか・・・今はない。








〜END〜


 

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