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□あれから僕らは・・・
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『翡翠〜克彦×珠洲〜』





「珠洲、これで最後か?」



「あ、はい。手伝っていただいて

ありがとうございます」



「礼など必要ない。

当然のことをしたまでだ」



「それでも・・・言わせて下さい」







彼女と恋仲となり過ごして

かれこれ5年が経った。

成人して幾らか過ぎ

危なっかしく、どこか抜けていた

俺の守るべき玉依姫は

相も変わらない。

だが、少女という見目は

女性へと成長し

彼女だしさをより濃くしていた。

柔らかな雰囲気と

分け隔てない優しさ。

時に人が良すぎることもあるが

ただ、玉依姫としての責務と自覚。

それが彼女をより成長させたのだろう。



ずっと、傍で見てきた。

時に泣き、時に喜び

その一つ一つを

俺は一番近くで見守り支えてきた。

だから・・・こうなることは

ある意味当然でもあり

今までの時間が故のものだろう。







「克彦さん・・・

今更ですが、私で、良いんですか?」



「・・・・・・はぁ」



「え!?あ、あの・・・」



「お前は・・・今更にも程があるだろ。

だいたい俺の性格はお前が一番

良く分かってるはずだ。

好きでもない相手と

これ程長くいるはずがないだろ」



「そ、そうですけど・・・」



「・・・何を不安に思うことがあるんだ」



「不安・・・とも違うのかもしれません

・・・まだ、実感がわかなくて」



「ふん・・・そんなもの

これから幾らでもさせてやる」



「あ・・・」



「こうして互いの温もりを感じることも

実感することに繋がらないか?」



「・・・はい・・・繋がります」







俺の腕の中で表情を綻ばせる彼女の

左手の薬指に光る指輪。

彼女を抱きしめる俺の

左手の薬指にも同じ指輪。

明日、いよいよ俺達は結婚する。

今までの関係の延長とも言えるが

また新しく一歩を踏み出すのだろう。

彼女への責任が俺に委ねられる。

だがそれは、愛しい重み。

それら全てを背負う決意と覚悟と

彼女へ示す日でもある。







「手始めに・・・」



「え?」



「その実感とやらを

もっと深く感じさせてやろう」



「?え?」



「要は俺に愛されていると

実感したいわけだろ?」



「はい・・・?・・・え?」



「なら・・・一番実感できるのは」



「え・・・!?え!!

だ、だ駄目ですっ!!

こ、こんな、昼間から、なんてっ」



「・・・くくっ・・・珠洲」



「はいっ?」



「何を考えてるんだ?

俺は二人でくつろぎながら

昔話でも、と思ったんだが」



「えっ・・・」



「何なら、お望み通り

昼間ではイケナイことをしてみるか?」







そんな俺の言葉に

初心な反応を示す彼女に

笑みが零れてしまう。

それは愛しいが故のものと

彼女の反応の可笑しさと

そそられてのものと。

つまるところ、彼女のことが

好きで仕方がないのだ。

それを未だに実感できないというのは

俺の愛し方がまだまだ足りないと

そういうことなのだろう。

ならば・・・。







「明日までと言わず・・・

今から頑張らないと、な」



「な、何を頑張るんですかっ!?」



「ん?聞きたいのか?」



「も、もう!・・・好きにして下さい」







恥ずかしがりながらも

抵抗を止めた彼女。

なら、今から俺の彼女への愛を

じっくり実感してもらうとしよう。








〜END〜


 

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