etc

□あれから僕らは・・・
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『SYK〜玉龍×玄奘〜』





「いたっ・・・!」



「!怪我、した?」



「あ、いえ・・・草の葉で

指を少し切っただけです」



「・・・貸して?」



「え?」



「切った指、見せて」





何かと私の事に関しては敏感に

そして、とても心配性で。

でも、今ではそんな彼が

愛しくて、嬉しくて。

とても・・・あ、愛されてるって

そう実感できる。

私よりも背が高くなった彼に

こうして見下ろされることも

とても、幸せ。



そんな風に幸福感に浸っていると

プクリと小さな紅珠が溢れる

私の指先に手を添えて。

未だに見つめ続けている彼が

何の前触れもなく

その指先をパクリと口に含んだ。





「!な・・・ぎょ、玉龍っ!?」



「少し、黙って・・・」



「あ・・・っ!?・・・ん」





熱い彼の口内に私の全身が熱くなって

そして、さらなる熱が押し当てられ

てろりと舌が這うその感覚に

恥ずかしい声が漏れ出てしまう。

「消毒」だと言う彼だけど

それでも、こんなに甘美で

苦悶する治療なんて聞いたことがない。





「ふっ・・・も・・・やめ、て・・・

くだ、さぃ・・・」



「玄奘」



「っ!」



「玄奘は今、とっても

大事な時なんだよ。

だから、小さな傷だとしても

気をつけないといけない」



「そ、それにしても・・・

こんな・・・」



「・・・顔、真っ赤だけど・・・

もしかして、熱でもある?」



「だ・・・だ、大丈夫です!!」





真剣な眼差しに胸が温かくなって

でも、キュンと苦しくなって。

心配げに見つめられながら

頬を撫でるその優しさに

もう、どうすることも

できなくなってしまう。

顔が赤いことなんて自覚しているし

大事な時であることも

よく理解している。

でも・・・私以上に

玉龍がこんなにも気にかけてくれて

常以上に私を見てくれていることが

本当に、とっても嬉しい。





「ん・・・止まった」



「あ、ありがとう、ございます」



「気をつけて、玄奘」



「はい」



「・・・やっぱり、心配」



「え!?・・・そんなに・・・

信用がないのですか?」



「・・・玄奘が気をつけているのは

僕も分かってるけど・・・

どこか危なっかしくて・・・

さっきだって

転びそうになったでしょ?」



「うっ・・・」



「お腹の赤ちゃんもそうだけど・・・

やっぱり、玄奘自身が心配だから」





愛おしげに私のお腹を撫でる

彼の少しひんやりとした手は

でも、とても温かく思えて。

その仕種も、彼の瞳も優しい。

未だ信じられずにいるのかもしれない。

でも、紛れもなく今私の中には

彼と私の命を分けあった

大切な宝物が息づいている。

まだ、膨らみもないお腹を

それでもまだ見ぬその生命を

慈しむ彼は

どこか父親の表情に思える。



「いっそ、ずっと抱えて行った方が

安心かもしれない・・・」

なんて、良からぬ呟きが

聞こえた気がしたけど

聞かなかったことにして。

今は、こうして彼と手を繋いで

ゆったりと肩を並べ歩いていたい。





変わらない・・・

でも、日増しに強くなる

彼への想いは

気づけばこうして新たな生命を

宿すまでに膨れ上がっていた。

これからも、ずっと・・・

こうして歩いていたいと強く願う。

いずれその愛らしい顔を

見せてくれるだろう

私達の宝物と一緒に・・・。









〜END〜


 

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