Liberamente
□5/sideA
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中佐から名前を思い出せたら鎖を解いてやると言われてから1ヶ月があっという間に過ぎてしまい、積もっていた雪もいつのまに解け・・残されたのは寒さだけ
ぼうっと外を見ていると、春の兆しがみえかくれしている
『温かい・・・』
「ほう、私の淹れてきたコーヒーはそこまで香ったのか」
『中佐・・・!?』
いっそ私の心ごと、どこか遠い国に運んでくれればいいのに
中佐からコーヒーを受け取る
「いい加減思い出せそうかね」
そっと首を横に振る
大佐から貰ったコーヒーを口にすると今の精神状態を見抜いていたのか、とても苦く感じた
真っ黒なコーヒーに映るのは涙目の私
私は何者なんだ・・・
考えるだけで頭も体も痛くて動けない
ジャラッ
中佐が私の手首の鎖を触った
「・・・等価交換をしないか」
『・・・?』
「私は君に名前をやる、君は私の傍にいて欲しい」
『中佐の傍に・・・?』
「このまま名前も家もなにも分からない状態で外の世界にでるくらいだったら、安いもんだとは思わんかね、それに・・・いや、よそう」
中佐はそれ以上言うのをやめ、私の鎖を丁寧にはずしていく
「・・・桃」
目から、しょっぱいものが溢れでる
「私は君の笑った顔が好きだ」