すきって言って?
□折り紙は覚えてる。
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そして、季節が1周しようとしていた、ある冬のこと。
俺は、子供が好きだったことから、少し離れた教育大に進学を決めた。
だから、お別れを言わなきゃいけなかったんだ。
アイツはどんな顔をするかな?
泣いてしまうかな?
泣き止んでくれるかな?
そんなこと‥ずっと考えてた。
今日もまた、アイツは赤じゃないランドセルのベルトを両手で掴んで、走って来る。
初めはなんて言おう。
もう、会えないんだよ?って、ハッキリ言った方が良いかな?
「はい」
「ん?」
小さな手が掴んでいたのは、いつもの折り紙で作ったハート。
これ、いつも持って来るから、もう引き出しがいっぱいだよ。
でも俺は、ちょっとの違和感を覚えた。
「お前‥いつものセリフは?」
「……」
下を向いてしまったコイツ。いつも元気良く言うあの声も、あの笑顔も、見えない。
「−−‥の」
やっと発したその声は
か細く、震えていた。
「ん?」
下から顔を覗き込めば、必死で涙を堪えている様子のコイツ。
「どした?」
小さな頭に手を乗せた途端、大きな水粒がポロポロと流れ出す。
「おわかれ、なのっ‥く」
「え?」
「わた、し、ひっく、おひっこし‥なの」
その言葉に‥なんだろう。込み上げてくる、涙。
「そか、そか‥」
「うわーっん、うーわーん‥っ」
その小さな身体を抱き締めながら、俺まで一緒に、大泣きしたんだ。