すきって言って?
□瓶に詰めた淡い色
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頑張るのを、やめたの。
広くて豪華なホテルの一室に、独り残された。
窓際に座って外を眺めれば、凍てつく空気に美しく散りばめられた、宝石のような光。
ゆらゆらチカチカと、あたしの胸の内とは正反対に、自由気ままに遊んでいる。
「はぁ‥」
出てくるのは溜め息ばかり。だけど、後悔はしていなかった。
これで良かったんだ。
この選択がいつか、ありのままの自分に辿り着く。そう信じたかった。
半刻前に別れた男は、あたしを飾りとしか見ていなかったから。
あたしはただのステータス。隣であなたを光らせる為だけの、ただの道具にすぎない。
あたしはそれが解っていた。解っていたけれど、愛していたから。だからどんなに苦しくても、無理に作って演じてた。
気に入られる為に。捨てられないように必死だった。でも−−‥
「はぁ、」
……見破られたの。
あたしはこんな、真っ赤なマニキュアをするような女じゃないって。
もっと楽に生きなよって。
そう……言ったヒトが居たの。
「なんだよ、アイツ」
寝転がって視界を塞げば、アイツの顔と声が浮かんでくる。
「しんっじらんない」
あの言葉は酒の席での軽い気持ちだったのかもしれない。それでも、あたしにはかなりのダメージだった。
頑張ってるなんて知ってる。
無理してるなんて解ってる。
でもそれでも、あたしは敢えて背伸びをしてた。だってそれが、幸せを手に入れる最善の方法だと思っていたから。
「ばぁーか」
そう呟いた時。可愛くない携帯の着信音が響いた。
ディスプレイを確認してみれば−−‥
「なによ」
『あはは。つれないなぁ』
アイツからだったんだ。
『今どこ? ちょっと付き合ってよ』
コイツはいつもヘラヘラ緩くて空気が読めない。
「嫌」
『あっそ? 美味い酒が手に入ったんだけどなぁ』
そして決して“会いたい”とか、そんな誘い方はしない。だって‥
「……行く」
あたしが、素直じゃないから。