BAND FEAVER!! (部活もの)

□第1章 仮入部のアルエッティ
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「え……えっ? ちょっと待ってよセリア、
ブラバンって―――“あの部”!?」



「あ〜、やっぱ評判はあんま良くないっすか」



「いきなり何を言い出すかと思えば……。

右も左も分からぬ新入りまで標的だなんて、
まったく……あの人たちもなっていませんね」






















おずおずと事情を告げたセリアの言葉に
二人は一瞬だけ心底驚いて息を呑み、
後は深い落胆の溜め息を吐き出しながら
木製の椅子にその背を凭れるのみだった。

昨日に聞かされていた話の内容から
あまり良い印象を持たれていないのではという
危惧も少なからず予想されてはいたのだが、
もと部員であったという彼らの反応を見て
その危ぶみが現実のものになる。



ローデリヒの物言いには若干の呆れを含んだ
憤りに近いものすら感じられる。

どうやら先日出合った青年から聞いた
『形振り構っていられない』という言葉は
彼らの行動に逐一現れているようだ。






















「もう、あの人たちときたら……!
いい? あいつらは少しでも弱みがあると
ガンガン付け込んでくるような連中よ。

始めて会った時に自己紹介で言ってたわよね、
確か小さい頃に二人の世話になったって。


きっと今回もその件でうまいこと言って
恩着せがましく勧誘したに違いないわ!

もし無理やり入れさせられたんなら相談して?
っていうかそれしか考えられないけど」



「そうですよ、突然あんな部に入れられたら
戸惑うばかりで新しい学園生活にも
身が入らないというものです。

あの二人にはよく言い聞かせておきますから
困ったことがあれば何でもお言いなさい」






















「あ、あのぅ…… お気持ちは有難いですし
エリザさんに至っては90%図星なんすが、
実はそーいう訳じゃないんですよ。

だからその〜、無理強いされて困ってるとか
どうしようって思ってるのとは違くて……



私、あの部で頑張ってみることにしたんす。
確かに最初はスゴイ押されたけど―――

部活の事情とか新入りさんの話とか聞いてたら
だんだんその気になってきて……
楽器とか全然吹いたことないですが
やるだけやってみようと思ってますっす」



「え……!?
うそ、あなた入るつもりなの? 本当に?」



「ええまぁ、一応何事も挑戦かと」



「俄かには信じ難いですね……

悪どい手を使われたのではなく、
あくまで貴女自身の決断で
入部を決意したのなら結構ですが___
何故またそのような心境に?」



「それなんですけどね〜。

最初はあの二人から言葉攻めくらって
一回マジで帰ろうかと思ったんですけど、
その場にいたアルフレッドさんに諌められて
どうにか話を続けることになって……」






















その時の情景を思い返すように
つらつらと記憶を辿っていくセリアの脳裏に、
やがて先日音楽室で成された会話の
一部始終が甦ってくる。

それは諦めたようにどっかと腰を下ろして
頭を掻いた青年が、溜息と共に呟いた
とある一言から始まったのだった。




















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