夢現そして無限たる夢幻(シリアス)
□E quindi uscimmo a riveder le stelle〜“太陽(エルソール)”と嘲笑に噎び泣く“天邪鬼(レムス)”〜
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―――……どうして。
どうしていつも、上手く言えないんだ?
……俺だって、“あいつ”に負けないくらい
お前のこと頼りにしてるし、信じてる。
世界中の誰より愛してほしいって、
心の底では…………思ってる。
…………なのに……。
俺が精一杯に願ったものを
笑顔のまま全て奪い去っていくのは、
いつだって俺の隣にいる“あいつ”なんだ。
俺の後ろに立ってたはずのヤツなのに、
気がつけば俺よりずっとずっと先を、
もう届かないほど離れた先を歩いてる。
―――……どうして……?
一体、何が悪かったって言うんだ?
なんで俺は、自分の本当の気持ちですら、
自分の言葉で伝えられないんだ……?
…………………………。
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…………………………。
くすくすくすくす…………。
次に僕が知りたい“こころ”はどれ?
歓喜、悲哀、忿怒、慈愛、それとも―――
次は誰の“願い”を叶えてあげようか?
あの子? その子?
それとも…………この子?
―――くすくすくすくすくす…………。
みつけた。 みつけたよ。
僕のだいじな“おともだち”…………。
きみは剛情にして悲業なる≪天邪鬼≫。
対峙の裏の先を往く、哀れなる反感……。
さぁ……さぁ。
きみ自身の物語を始めよう。
心の深淵に巣食う切実なる思いを、
今こそ眩しすぎて近付けなかった“太陽”へ
啓示するべき時なんだ。
望まれない生を受け、獣の愛を啜り育った
人の心を知らぬ二つの鏡像。
一度分かれた道が再び交わることは
恐らくもう二度とないだろう。
兄は彼を救うために燃え盛る太陽をも
暗冷なる闇の懐中に沈めようとし、
弟はその思いに応えられなかったが為に
無下の嘲笑へ身を窶し頽(くずお)れた。
しかし……
真に憐れなのは≪エルソール≫!
その清き光に晒され苦しむ者がいることに、
一向に気付くことができない愚の純真!
心無い兄弟にも、其を生み出した天神にも、
また其を育てし牝狼の上にさえも、
惜しみなくその目映いばかりの光を
分け与えたというのに。
あぁ……、彼は己の育みし災禍に
無惨にも食い荒らされてしまうのだろうか?
彼を紅き海へ沈めるのは浅ましき同情、
果たして誰がそれを成すのだろうか?
狂おしく陽光を求め嗚咽するレムス、
はたまた最愛の片鏡を救うべく
常闇へ潰えた≪ロムルス≫―――……?
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