夢現そして無限たる夢幻(シリアス)
□Great Spirit Prayer of the Iroquois 〜“夢魔”と育ちたがりの“水兵(セタンタ)”〜
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(1ページだけほのぼのするよ! by主)
「たっだいまなのですよ〜〜♪
フィン!花たまご!」
イギリスから北上したスウェーデン達の家に
帰宅したシーランドは、明るく声を上げると
庭にいたフィンランドの腕に
勢いよく飛び込んだ。
その足元では真っ白な子犬が
尻尾を振っている。
実はシー&スーの二人、イギリスから
彼の城砦を運転して帰ってきたのである。
あれ?城砦って海底と固定されてて
動けないはずじゃ…という突っ込みは
この際ナシでお願いしたい。
(劇場版的な意味で)
「あっ、おかえりシー君!
スーさんもお疲れ様です!
すいません、いきなりなのに今日の会議
代わりに行ってもらっちゃって……」
「ん…別にえぇど。
……で、用事は済んだのけ?」
「あぁはい!
僕のほうは代わってもらったおかげで
無事終わりました!
ほら、僕の家って5月のヴァップの時期に
学生総出でハヴィス・アマンダの像を
掃除する行事があるじゃないですか〜。
乙女像に学帽を載せる学生さん6人を
選んだりするのとかで、
けっこう時間かかっちゃって。
でも今回もきっとにぎやかな
お祭りになりますよー♪」
「……そぉけ、楽しみだなぃ。
(めんげぇ……)」
うきうきとした表情で語る
フィンランドを眺めて、
節目がちに同意するスウェーデン。
微妙に頬が赤い。
と、その脇をすり抜けてシーランドが
彼に走りより、エプロン姿の腰あたりに
しがみついた。
「フィンー!
シー君お腹すいたのですよ〜!」
まるで子犬のように円らな瞳で見上げ、
自らの空腹感を切実に訴える様は
傍目から見ても普通の親子にしか見えない。
もちろん、親譲りの立派な眉毛を
除けばだが。
「はいはい!
そう言うと思ってカルヤランピーラッカを
作ってる所だったんだよ!
それじゃスーさん、みんなで
お昼の準備しましょうか♪」
「ほっだら、俺は
ヤンソンス・フレステルセさ
こしゃうべか。」
「おお〜!
ジャンソンズ・テンプテーションですか!
シー君あのグラタン大好きなのですよ〜♪
フィン、僕もお手伝いするのですよ!
何すればいいですか?」
「えーっとね…
もう生地は焼きあがってるから、
あとはお米のフィリングをのせて
焼くだけだよ!」
「任せてくださいなのですよー!
それくらい楽勝です☆」
「入れる米さ…よっくどかんがまさねぇど、
んまぐねぇかんなぃ」
りょーかいですよ〜、と元気よく返事をして
家の中に入ろうとしたシーランドは、
ふと視線を感じて振り返った。
庭を囲んでいる柵の向こうに、
ちょうど自分と同い歳くらいの
少年が佇んでいたのだ。
「(……? 誰ですか?
フィンの家の人とはちょっと
違う気がしますけど……)」
少年はシーランドが目を向けたことに
気づくと、人懐っこい笑みを浮かべた。
彼も思わず笑い返すと、くるりと踵を返して
生垣の向こうへ走り去ってしまう。
「(……なんだか
変わった奴なのですよ……。)」
「ん? シー君、どうかした?
庭のほうに何かあったの?」
「……ううん、なんでもないのですよ。
それよりお腹すいたです!
早くお昼の準備しようですよー」
「わかったわかった!
押すのやめてよー、あはは……」
「(……やっぱわらしこは元気が一番だ……
……ん。)」
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