らりらり
□冷たいキスをめしあがれ
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冬なんだよ今は。
だって12月。
だから四季に当てはめると冬に入る。
綺麗で、冷たい、冬。
そんな寒さに凍る今日。
水色を薄く伸ばした空の下。
私はたまたま通りかかった公園の片隅に、忘れさられたようにぽつりと置いてあるベンチの前で立ち止まった。
「わお!!」
楽しげに呟いた時には既に首から下げていたカメラを手に取っていた私。
ひんやりと冷たい年期の入ったオンボロカメラ。
それは氷みたいで、触れた瞬間指先がじわりと鈍る。
はー、と息を吐けば目の前が白く染まる。嗚呼、寒いなー。
こういう日はコーンポタージュが飲みたい。出来れば濃いやつ。ケチってお湯で薄めたようなやつじゃなくて、めちゃめちゃ濃厚なやつ。
「・・・・っくし!」
と。つらつらと考えていたら、目の前のベンチで仰向けに寝てる人がくしゃみを繰り出した。
思わず構えていたカメラを下げる。
私写真撮ろうとしてませんよまさか!そんな不躾な事しませんよ21にもなって!そんな顔を慌てて作ってみる。加えて口笛も。
だけど寒さでうまくCHAGE and ASKA歌えない。くっやしいな。私には難易度高かったみたい。ていうか1人2役難しいよ。
だけど、ベンチで寝てるその人はくしゃみ1つしただけて起きる気配がない。
顔を隠すように新聞紙をすっぽり頭に被って寝てるだけで。
顔が見えないのに寝てるって分かるのは、白衣を着たその体がゆっくり上下しているからで。
「・・・・・」
まあ、やる事は決まってる。
こんな寒い日に、わざわざベンチの上で寝てる人に出会えるなんて、早々ない。