らりらり

□冷たいキスをめしあがれ
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嗚呼。



人差し指が鳴いている。



シャッターをもう一度押したいと。



彼の姿を撮りたいと。



私の指が、鳴いている。




だけど押せない。



目が離せなくて。




寒さに震えて、心が震えて、何故か耳が真っ赤になって。どきどきと心音が鼓膜を刺激して。





レンズを覗けない。




そんな私を見た彼はベンチをギシギシ鳴らして立ち上がり、私の持つカメラを見てどこかストイックに笑った。





「最近近所で変わったカメラマンがいるって患者さんが言ってたけど、君の事だろ?」




彼の長い焦げ茶の髪が、光に当たって深緑に変化する様をいつまでも見ていたい衝動にかられた12月。







私が高橋さんに出会ったのは、そんな日。






綺麗で、寒い、幻想的な、冬の日。
 
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