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□捨てて拾っての足掻くぼくら
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「丸井君!」

「・・おぅ」

「これ先言ってた・・って、なんか元気ないね。どうかしたの?」


「いやー、んなことねぇよ。」


窓越しに向けていた視線を戻し、クラスメイトへいつもの快活な表情で笑いかける。
それは完璧だ。
ブン太の表情に違和感を感じなかったようで、そのまま大きな目を窓越しに向けた。

「あ、今2年生体育なんだ。」

グラウンドにはジャージ姿の生徒が走っている。
ブン太はいつものようにガムを噛んだ。


「そ・・・バカ也もな」

「え、なにか言った?」


口に広がる甘い味はお気に入りだったはずで、ブン太は小さく溜息をつく。


「美味くねぇ・・」

戻した視界に入る光景。楽しげに話す赤也の表情を見ていると、苦々しく思えた。


始業のチャイムが鳴る。
動き回る音が他人事のようで、思考を占めていくのは判然としないもの。

らしくない。そう思いこそするが、一度沸き上がった何かはそう簡単に消えてくれそうにない。

お手上げの思考は

「・・・・バッカみてぇ」


そう自嘲と共に吐き捨てた。



「切原!ボーとするな!」
「はいはい、すんませーん。」

「赤也、3年の教室なんか見てどーした?」


「何でもねぇ。」



お目当ての先輩か、年上が好きなのか、と矢継ぎ早に交わされる言葉。
それらを聞き流し足を動かすことだけに意識を向ける

「・・・・・」

胸中に渦巻くものを押し隠して。


走る横顔はどんなにひどいものだろう。それを彼が見ているわけもないと、わかっているけれど。

ただただ、頭上に薄く広がる水色が鬱陶しく感じた。
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