短編
□気づいて
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あと5分でお昼であり、戦争と化するまでの時間でもある。
殆どの男子生徒は財布を片手に教室を出る準備を始めている。
この高校では1日30個限定の一度食べたら普通のプリンは食べられない程、おいしい『超なめらかプリン』が授業終了後の12時に発売開始する。
全校生徒は、そのプリンを手にする為、一斉に購買へと駆け足。
そんなプリンや戦争など考えずに綺麗な黒髪で長髪の男―ユーリ・ローウェル先生を見つめる男が1人。
(…今日も全然話せなかったなぁ)
朱毛の少年―ルークは今日も盛大なため息を吐く。
新任のユーリ先生が来て2ヶ月。
男に一目惚れしたルークは彼に嫌われる覚悟で告白しようとしたが、まだお互いよく知らない者同士。
少しでも会話をして自分を知ってもらおうと近寄るが…ユーリは容姿完璧の中身良しで女子にかなりモテる。
そのせいか、全然彼に近寄れず会話も挨拶だけで進展なし。
(この授業が終わったらすぐに先生の所に駆けて…)
あれこれ作戦を立てているうちにチャイムが鳴り、慌ててルークは席を立つ…が。
「今日は必ず手に入れてみせる!待ってろ俺のプリン!」
一斉に走り出した男子でタイミングを逃し、数秒遅れて先生がいる所へと向かうが既に先生の周りは女子だらけ。
「ユーリ先生♪お弁当作ってきたから食べて!」
「私も作ってきたんです!!」
いつも購買で昼飯を買う先生に女子が手作り弁当を持ってきた。
普通なら男としては手作り弁当は嬉しいのかも知れない…それが自分の為になら余計だ。