長編
□第2話
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「私達を追ってきた騎士でしょうか?」
ザーフィアスを出て、アスピオという街に向かう為に途中にあるデイドン砦を通るが、騎士が所々に立っていた。
「どうかな。ま、あんま目立たないようにな」
「はい。私も早くフレンに追いつきたいですから」
「んじゃ、さっさと砦を抜けますか」
そう言いユーリは進むと、エステルは何かに気づき、そちらに走って行ってしまった。
本当にわかっているのかと、ユーリもエステルが向かった先に行こうとするが、砦に着いた時から静かなルークへと声をかけるが、ルークは別の方向へと顔を向けたままで反応がない。
「ルークどうした?」
ユーリはルークが見つめる方向を見るが、別に変わった物も何もない。
「あ、いや…別に何も!…俺もあっち行ってきていいか?」
ルークは指で先程見ていた方向を指す。何もないと言うわりには何かありそうな雰囲気で…でも、もしかしたら何か思い出したのかもしれないと、目立つ行動はしないと約束に許しを出す。
笑顔で行ってしまったルークの背中を見守り、さっさと行ってしまったエステルの様子を見にエステルが向かった馬車へと近づいていった。
*
ルークは砦に着いた時から気になっていた砦の屋上へと行くと、そこには銀髪の男が遠くを見つめていた。
「あの…何か見えるんですか?」
思わず声を掛ければ、相手は軽く後ろへと振り向き、興味が無さそうな目が驚いた様に見開きルークを見る。
「お前…は」
「へ?俺?あ、俺ルークって言います」
ルークが名を名乗れば、男は向き合うように振り向いてルークの前までと歩み寄る。
「そうか。お前が…」
「?」
男がルークに触れようとした手が途中で止まり、男がルークの後ろへと視線を向けてる事に気付き、ルークも振り返ればユーリが立っていた。
「…何やってたんだ?」
「ユーリ!!」
ルークがユーリに駆け寄ろうとした時、男に腕を掴まれ足を止められた。
そしてそのまま引っ張られればルークは男の腕の中へと吸い込まれる。
いきなりだった為に抵抗なく腕の中に導かれたルークは一瞬なにがあったのかと唖然したが、腰に腕を回され気付く。
「なっ!?離せ!」
「あいつと、旅をしているのか?」
「は?」
あいつって…ユーリの事か?
「だったらなんだってんだ!!」
ルークが両手で男の胸を押し、離れようとするが全く逃げられず、今度は男の胸を叩くがそれも無意味だった。
すると今度は腰に回していた腕に力が入り、更に引き寄せられる。
「ッ?!」
驚くルークを無視して男はユーリへと視線をやれば口を開く。
「この者は私が預かる」
「なっ!?」
「なんだ?お前ルークの知り合いかなんかか?」
「会うのは初めてだが…知っている」
その言葉にルークは目を見開いて男を見る。
この男は自分を知っている…この男に聞けば自分の事が知る事ができる。
目の前に自分を知る人がいる。
―――でも
「お、俺は、お前が俺を知ってても!いきなり抱き締めてくる奴とは居たくない!」
悪い人ではないだろうけど、いきなり抱き締めてくる様な奴だし…なによりエステルに一緒にフレンを探すって約束したし。
「…だとさ。フラれたな」
そんじゃっとユーリは静かな足取りで近付いて思い切り剣を男へと向ける。
「ルークを返してもらおうか」
ユーリの真剣な目に男は腕の力を抜けば、ルークが勢い良くユーリの胸に飛び付く。
「おいおい。こんくらいで泣くなよ」
「な、泣いてねーよ!」
ユーリが笑えば、ルークも笑う。
そんな2人をみて男は何事もなかったかのように横を通るが、それをユーリが止める。
「なぁ、あんたルークの何知ってんだ?」
それはルークも知りたかった事で、男を見れば振り返る事もなく話す。
「…それを話した所でお前が守れるとは思えない」
「…は?いや、守れる守れないとかじゃなくてな」
「あ!いました!!もぅ探しましたよ」
「エステルにラピード?」
エステルとラピードの登場に男は何も言わず立ち去ってしまった。
「?知り合いです?」
首を傾げるエステルにユーリは溜め息を吐き、ルークは男がいなくなった方を見つめていた。