長編2
□第1章
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昔、この世界には吸血鬼が存在していた。
しかし人間の狩人によって吸血鬼は減り、またその姿を見る人も少なくなり、もはや吸血鬼という存在を信じる者も減っていった。
しかし吸血鬼は、今も確かに存在している。
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「このクソガキ!!待ちやがれ!」
「絶対に逃がすな!」
狭い路地裏に入って行く4人の男の姿の前に1人の少年が素早くビルの廃墟へと逃げ込んだ。
階段を駆け上がり、適当な部屋へと入れば身を隠した。
「くそっ!何処に行ったんだ!?」
「このビルに入ったんだ。何処かに居る筈だ!」
「油断はするなよ。あの朱髪は小柄で、すばしっこく、逃げ足が速いと聞いたからな」
4人の男共は、それぞれ別行動で少年を探し始めた。
(…小柄で悪かったな)
4人の会話を聞いていた朱髪の少年――ルークは心の中で呟く。
今、自分が居るのは2階。
窓から逃げる事も可能と、様子を見ながら四つん這いで窓へと近付く。
息を凝らして一歩、また一歩。
「何やってんだ?」
不意に声を掛けられ、思わず上半身を起こした。
自分が向かっていた窓の右の窓に暗闇に溶けてしまいそうな全身漆黒の男が立っていた。
「―ッ!!…お前、誰だよ」
自分を追ってきた男ではないと解っているが確かこの部屋に入った時、人はいなかった。突然現れた男に警戒したまま問う。
「人の名前を聞く前に、自分から名乗ったらどうだ?」
「……俺!?俺はルー…じゃなくて!」
思わず名を言いそうになるルーク。この男が何者であろうと自分には関係ないし、今から自分はこの場から立ち去る。
名前を言ってもしょうがない。
「じ、じゃ俺は行く「うわぁぁぁぁぁ!!」…ッ?!」
窓に手を当て、飛び降りようとした時、自分を追ってきた男達の1人の叫び声が聞こえ、窓から手を離して廊下に出た。
「な、んだ?今の声…」
嫌な予感がして1階へと向かおうとしたルークの腕を掴む、先程の男。
「なっ!離せよ!!」
「よくわかんねーけどお前、あいつらから逃げてたんじゃねーの?」
「そーだけど…お前には関係ねーだろ」
「残念ながら関係あんだわ」
は?っと顔しながら未だに掴まれている腕に気付き、腕を引くがビクともしない。
「いい加減離せよ!」
「今1人でこの建物の中を出歩くのは危険だ」
「あら、怖い。なら私も一緒に連れて逃げてくれるかしら?」
2人は、いつの間にか現れた金髪の女性に振り向く。
「誰だ?」
「あんたもしつこいな」
男は女性からルークを守るように間に入り、腕を握る手に力が込められた。
「待ってるだけじゃ、狙った獲物は寄ってこないからね!!」
突然、女性は人が変わったようにルーク達に襲いかかり、それを男はルークの腕を引っ張り避ける。
一瞬何があったのが解らない。
しかし女性が目の前から消え、先程まで自分が立っていた場所にいて、女性の右手の先にはコンクリートが砕けてる。
力に自信があってもコンクリートなんて人間には砕けない…じゃ目の前にいる女性は?
「ぼーっとしてんな!!逃げんぞ!」
男に腕を引かれ女性から離れていく。