バトルシーン練習企画
□ウリエルVSレヴィアタン
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―――――戦え。
ドスッ!という音と共に、ウリエルの視界を何か巨大なリボンを連想させるものが掠めた。
理解はあまり追いついていないウリエルだったが、天界の重要な戦闘要員である彼が取り乱すことはなかった。落ち着いて、まずこれが何なのかを考える。
答えは意外とすぐに出た。
というか、考える必要も無かった。
「おらおらおらおらおらおらあああああああッ!!!!!」
怒声のような、罵声のような―――ただし幼い女の子特有の高い声だった。声の主はその尻から尾のように生える『リボン』を何本も振り回し、大木をいとも容易くなぎ倒してこちらに進んできていた。その化け物じみた様を見たウリエルは、ついつい顔を引きつらせる。
「よりにもよって、お前かよ…!」
長い髪を振り乱して迫ってくる幼女は、どこからどう見ても最強の海獣、レヴィアタンであった。
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時は先刻に遡る。
「うーん、と…」
とりあえず、首を傾ける。
ウリエルは緑の生い茂る森の中であぐらをかいて鎮座し、自身の足りないと自覚しているお頭に残された記憶を辿る。
管理人に呼ばれて、呼ばれたと思ったら何か物騒なことを言われて、言われたと思ったらそれについて抗議をして、抗議をしたと思ったら穴に落ちて――――
で、何故記憶が今に飛ぶのか。
「…あー、駄目だこりゃ」
がしがしと頭を掻き考えることを放棄したウリエルは、管理人の言った言葉を思い出す。
――――戦え。
そして時は現在に至る。
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「あーもー!少しくらい落ち着く時間くれてもいいじゃねーか!」
こっち来て僅か20秒でクライマックスすぎだろう、と文句を垂れるウリエルだったが、確かにこの状況は笑えない。
目の前の最強の怪物は、獲物を前に舌なめずりをしながら尾を楽しそうにうねらせていた。目を爛々と輝かせ、口端は限界まで釣りあがっている。殺人ジャンキーのようだ、とウリエルは感じた。
そして辺りに生えていた木々は彼女によってなぎ倒され吹き飛ばされ―――今はどこに所在するやら検討もつかない状態であった。彼女の幼い身体のどこからあれだけの木々を吹き飛ばすだけのパワーが眠っていたのか、それも検討がつかないが、とりあえず、二人の立っている周辺は綺麗さっぱり木は無くなっていた。
ウリエルは流れる冷や汗を止められないまま、こんな化け物幼女と対峙しつつ、これからどうしたものかと思案する。
「…ねえ、あんたさ」
「え?」
「たしかベリアルの元後輩だったよね?」
急に何を言い出すかと思ったら。ウリエルは今一度「え?」と聞き返す。
「だから、ベリアルが今みたいになる前、どんなんだったか知ってるんでしょ!?」
言っていることがまるで幼児のようだが―――何となく彼女の言いたいことを掴めたウリエルは、
「まあ、知ってるけど」
肯定的にそう答えた。
答えた途端、レヴィアタンの目の色が変わる。
殺人鬼の目から――恋する乙女の目に。