11/02の日記

21:29
磔死体
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 ―――何だ、これは。

 目の前に掲げられた十字架は、一瞬で彼の思考を奪った。

 ―――何だ、これは。

 考えようとすると吐き気が込み上げて来る。脳が考えることを許してくれない。

 ――辺りに充満するのは、黒煙。
 ――目の前の十字架に磔になっているのは、死体。
 ――ところどころ煤を浴びて黒くなった、裸の女の死体である。
 ――先ほどまではちゃんと服を着ていたらしい。首元にはネックレスのように、燃え切らなかった布が残っている。
 ――火刑に処され、死してなお更に性器を晒すという侮辱を受ける女性。これからまたこの死体を灰にして、川に流してしまうのだろう。
 ――彼女は、とても許されないことをした、らしい。

 ―――彼女が、何をした?

 彼にはもうわかる。だが同時に、わからないことがある。

 目の前の女性――ジャンヌ・ダルクは、何故死んでいる?

 神の使者の声を聞き国を救った彼女が、何故神を信じる者達によって殺されている?

 そんな矛盾は、彼の狂気を破裂させるのには十分すぎた。

 「ああああああああああああああああああ!!!!!!」



  *


絶望っていいよね

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