小説

□殺人鬼願望
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殺人鬼…
殺人鬼とは人を無差別に殺害し快楽を得る鬼である。と僕は思う。
殺人鬼は恐れられている。避けられている。いや、もっと別に表される言葉がありそうだが、まぁどうでもいい。

僕は殺人鬼になりたかった。

きっかけは、あるサイトで読んだ小説であった。
小説の中で殺人鬼は、奇声を発しながら尋常ではない圧倒的力で、無差別に人類を殺害していた。
僕はあくまで普通の人間だから、小説のようにはいかないと内心では解っているし、実際に殺人鬼と呼ばれたある国の少年は僅か数人しか殺害していない。
僕は酷な殺害方法で数十人殺害して、世界に名を知らしめてやろうと思った。

少年は15歳であった。



数ヵ月後の今日。
今日は早起きをし、少年は近所の100円均一に来ていた。
そこで、爪切りやらハサミやら武器として使えそうなものを買い漁っていく。
会計をしてみると100円均一での買い物なのに結構な金額になったが少年は気にしない。
自分の小遣いじゃないからだ。

100円均一を出ると少年は汽車に乗り、街の方まで向かう。少年の住んでいる地域は田舎だから汽車しか通っていないのだ。
少年は汽車で向かいながら、妄想シュミレーションをはじめた。



──────────────
駅で降りた少年は多くの人が集まる通りに出る。
リュックからまずはハサミとカッターを取り出し、横を通り過ぎようとした爺に切りかかる。
悲鳴。爺は地面に倒れて呻いている。
その爺の肉をハサミとカッターでズタズタに刻んでゆく。
あはははははははは。楽しいなあ。あはははははははは。
爺が死ぬとキィキィした悲鳴を上げる女に切りかかる。
押し倒して服を切り刻み、女の裸体に無数の釘を突き刺す。
ブスッブスッブスッブスッ。
血が飛ぶ。ぴゅーぴゅー。
あはははははははは。あはははははははは。
次は携帯で警察に通報しようとしたサラリーマンっぽい格好の男に飛び掛かる。
最後の一本の釘を目玉に突き刺す。
叫び声を上げる口を閉じさせ、裁縫用の針と糸で縫い合わせる。
ワイヤーで鞭打ちにし、飽きたところでカッターを胸に刺し殺害する。
あははははははははあははははははははあははははははははあははははははははあははははははははあはははははははは……
──────────────



気付けば終点であり、目的地である駅に着いていた。
しまった、夢中になりすぎた。
まぁ終点だから間違って遠くまで行ってしまう事はないからいいのだ。

駅を出て、人通りの多い通りへ向かう。
先程の妄想シュミレーションを思い出してニヤニヤする。
ふ、ふは、ふははははははははは。
もう誰にも僕は止められないぞ。
絶望だ。絶望を味わえ!!

通りに着くと、リュックからハサミとカッターを取り出した。
あひゃーひゃひゃひゃひゃ。
ターゲットを偶然通った爺に…僕はカッターを構えて走り出し…。

「ちょっと君、危ないからカッターやハサミを街中で出しちゃ駄目だよ?」

警察だ。
僕を餓鬼扱いしやがった。
コイツが一番目だ。

「うひゃひゃっ。黙れ黙れ黙れ黙れ!あひゃひゃひゃひゃひゃ死ねえ!!!」

警察に飛び掛かる。
ハサミとカッターをメッタ刺しにし、内臓を引きずり出し…
頭の中では上手くいった。
本当に上手くいったんだ。
けど現実は違った。
僕は警察に捕まり、ハサミとカッターを奪い取られてしまっていた。
だが殺人鬼は諦めないぞ。
リュックから釘を取り出し、突き刺そうとする。だがそれも止められ、釘を没収されてしまう。
ならばと、リュックから爪切りを取り出し、警察の皮膚を切り千切ろうとしたが、やはり没収されてしまうだけだ。

何故だ。僕は殺人鬼なんだ。警察なんかに負けちゃいけないんだ!

暴れまわる僕に警察が困ったように「落ち着きなさい」とか言ってくる。落ち着けるか。落ち着けるか馬鹿野郎。僕は殺人鬼なんだ。
僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼僕は殺人鬼
ぐえっ。


少年は暴れまわり過ぎてリュックに入れていた包丁が背中に突き刺さった。
血が溢れだし、視界が暗くなってゆく中で、警察の溜め息と呆れた顔が見えた。


†──────────†

少年は殺人鬼に憧れて15年という短い一生を終えた。

殺人鬼に憧れても所詮、凡人は凡人であった。




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