紙束

□傷口
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「平気だ、大丈夫だ」

不意に聞こえた声に、ルークは顔を上げた。

いつの間に近づいてきたのか、傍らの木に寄りかかった幼なじみがじっと彼を見下ろしていた。

「お前はそればっかりだな」

スカイブルーの瞳がルークの腕をにらむ。
彼の左腕の肘の内側から手首にかけて、引き裂かれたような傷が二本走っていた。
出血がひどい。

出血を抑えるために腕を高く上げて木に預け、ルークは右手で不器用に道具袋を探った。
大量の血が腕を伝い、白い袖にシミをつくる。

「だって、これくらい平気だぜ?」

道具袋から取り出したグミを口に含んで、ルークは苦笑した。

「バカ言うな、血管が縦に裂かれてるんだぞ!」
「こんなのグミ食っときゃ治るって」

二つ目のグミを口に放り込む。
咀嚼して飲み下すと、ゆっくりと出血が止まった。

「俺より、今はアニスだろ」

少し離れた位置で回復を受けている小さな背中に視線を向ける。つられるようにガイもそちらを見た。



鮮やかなピンク色の服が、今はどす黒い色に変わってしまっている。
背中を大きく斜めに走る傷口にナタリアとティアが手をかざしている。

体の大きさに対して多すぎる血を失ってしまった彼女は、しかし青白い顔で気丈に笑ってナタリアたちに何かを言っていた。

「アニス、大丈夫なのか?」
「出血は止まったが、失血がひどいな。今日はもう休まないと」
「そっか。みんなボロボロだもんなぁ」

ルークは苦笑して血に染まった袖を裂くと、おざなりに腕の付け根を縛る。

「じゃあ、早く街まで戻ろうぜ」

木を支えに立ち上がってガイに笑いかける。
ガイの向こう側で、治療が終わったのか、ティアとナタリアもかざしていた手を下ろした。

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