紙束
□ヒトリノ夜
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静かな、どうしようもなく静かな空だった。
その日もリオウは門前に立っていた。
時は夕暮れ。もうすぐ全てのたいまつに火が灯るだろう。
それでもリオウは、薄暗い草原の奥に目を凝らしていた。
戦友のひとりが中に入らないかと呼びに来たが、彼は物憂げな微笑を浮かべてかぶりを振った。
ひとりの少年を待っていた。
きっと、ここに来るはずなんだ。そう信じて、リオウは毎日門前で待ち続けた。
友との再会を信じて。
親友と再び笑い合える日々を夢見て。
―――それが、決して叶うことのない夢とも知らずに。
後にデュナン湖統一戦争と呼ばれる戦争が幕を閉じた。
残虐な殺戮を繰り返していたハイランドの狂王・ルカは倒され、やがてハイランドも滅びた。
強大な王国に勝利したのは、僅か十五・六の少年が率いる都市同盟軍。
英雄・リオウの名は、瞬く間に各地に轟いた。
だか、人々は知らなかった。
共に戦った仲間達でさえ気付いていなかった。
英雄の名が、人々の喝采が、まだほんの少年でしかなかったリオウを、深く傷つけていたことを。
殺せば殺すほど、彼の心は血を流し
た。
人々の喝采は、彼の心を深くえぐった。
幼いがゆえに感受性豊かな彼の心は、人々の声に力を持つ者への畏れ、羨望、嫉妬を敏感に感じ取っていた。
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