紙束
□鳥籠のトリ
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暗くてきゅうくつなここはキライ。
このとびらをあけて。
ここから出して。
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【side:N】
日が沈んでからもう随分経つ。
雨の降る真っ暗な外を見て、僕は小さくため息をついた。
まだ派閥に来てから一ヶ月も経っていないというのに、妹弟子の脱走は既に五回を超えている。今日も朝から姿が見えないと思っていたら、どうやら六回目の脱走劇を試みているらしかった。
最初こそ僕も探しに行っていたが、こうも頻繁に逃げ出されては、さすがにそんな気持ちも失せてくる。
どうせ腹が減ったら帰ってくるだろう。そう軽く考えて、いつも通りに一日を過ごした。
―――しかし、今回は違った。
夕食の時間はとっくに過ぎている。
彼女はまだ帰ってこない。夕方から雨も降り始めたし、外はだいぶ冷え込んでいるはずなのに。
師範は気が気でない様子で、ついさっき、再び捜索に飛び出していった。
僕は少しのいらだちと不安を抱いて、彼女の帰りを待っている。
………やっぱり、自室の周りくらい探してみよう。
僕はベッドから立ち上がった。
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