紙束

□ヒトリノ夜
2ページ/4ページ




リオウは誰もいなくなった門前に座り込んだ。
壁に背を預けて、それでも草原からは目を外さない。
次々と浮かんで消えるのは、親友のこと、戦友のこと、そして、義姉のこと。



『リオウは優しいね!あのね、リオウはね、お姉ちゃんの自慢なんだよ!』



懐かしい義姉の声が耳の奥で蘇る。

―――優しい?僕が?

リオウは静かにかぶりを振った。

―――違う。それは違うよ、ナナミ。


僕は優しくなんかない。

こんな血の臭いが染み付いた奴が、優しいワケ、ない。


僕は………僕が、この戦いで得たものは何?
名声?玉座?


………僕は、守れなかった。


リオウは両手を見つめた。
戦いのさなかは、常に血に濡れていたこの両手。
一番大事なものを、守れなかった。

「ナナミ……」

涙が溢れた。
それは頬を滑って、くたびれた革手袋にシミを作る。
歪んだ視界に、リオウは呟いた。



「………本当は、殺したくなんか、なかったんだ。」



呟いたら、止まらなくなった。


「武器なんて、使いたくなかった。
人だって、モンスターだって、何も傷つけたくなかった。

本当は、戦争なんてしたくなかった……!!」


逃げ出し
たいと、何度思ったことか。
消えてなくなってしまいたいと、何度願ったことか。


「僕は、英雄なんかじゃない……!!」









僕は、ただの人殺し。




.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ