紙束

□鳥籠のトリ
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【side:N】



「ねぇ、おしえて。どうやったらここから出られるの?」

真っ直ぐに僕を見て、トリスはそれだけを繰り返す。
ここから出たい。そう繰り返す。
僕は何も言えずに彼女を見下ろした。

「おしえてよ、ネスティ」
「あたしね、ここから出たいの」
「どうしたらいい?」
「ねぇ、どうしたらいい?」



澄み切った大きな目。
僕を見てるけど、見ていない目。
瞳に僕を映すけど、それは鏡のように表面に像を貼り付けているだけで、決して彼女の心の中にまでは映らない。
まるで、全てを拒否するように。



「ネスティ」
「………君は、」

気持ちは分かる。
僕だって、幾度逃げ出したいと願ったか知れない。
だが、君は、

「君は、北の街に帰りたいのか?」
「………うん。」

あんなに思ってくれる師範がいるのに。
よそ者の自分たちを心配し、こんなにも愛情を注いでくれる優しい人がいるのに。

「君は、そんなにもここが嫌いか?」


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