紙束
□そこにヒカリを見た
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―――追われることがこんなに怖いだなんて知らなかった。
今この山にはどれだけの警官がいるのだろう。少なくとも三桁は下らないだろう。
その全員が僕を捕らえるために奔走している。
誰に会っても追いかけられる。
冷たい目で僕を見る。
みんな敵だ。
―――味方がいない状況なんて、慣れていたはずなのに。
立ち上がろうとして、失敗した。
足に力が入らない。
体は一応鍛えてあるけど、キンタのような並外れた身体能力を持っているわけじゃない。
飲まず食わずで丸一日。そろそろ体力の限界だ。
知らず舌打ちがもれた。
最初は大がかりな山狩りに失笑するくらいの余裕はあったはずなのに。
たかが子供ひとりを探すためにこれだけの人数を揃えてきたのかと思うと、なんだか笑えた。
しかしよく考えれば今の僕は殺人事件の容疑者だ。逃走したことで罪はほぼ確定しただろう。
なるほど、殺人犯を追いつめるためにはこの人数は妥当かもしれない。
(―――それとも、)
僕だから、なのか。
諸星さんたちはもう僕の呪われた血筋を知ってしまっただろうか。
まさか、みんながしゃべったなんてことはないだろうけど。
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