novel

□守護者伝説 起
1ページ/13ページ

夢の中。
真っ白な世界だ。
何も、ない。

そんな中にある少女がいた。


金髪のセミロングで、白い肌に黒いゴシック調のワンピースを着ていた。

じっと見つめていると、
少女が振り返った。

灰色の目を瞬いて、
自分のほうへ歩いてくる。
そして彼女は、澄んだ声ではっきりとこう言った。


「…私があなたを守るから。だからあなたは私を守りなさい」


彼は少女に呼びかけようとしたが、
別な女性の声で彼は現実に引き戻された。





「起きなさいっ!!ライト・デリアドット!!」





教科書がオレンジがかった山吹色の頭に直撃する。
よだれの海に溺れていた彼は、ようやくその声で目が覚めた。




周りから哀れみとも思われる笑い声が起こる。

ここ、セルリアハイスクールは、
上から特上クラス、上級クラス、普通クラス、下級クラスの4つに分かれている。
ライトは下級クラス、しかも成績は最悪だった。

それだけではない。

遅刻、早退は当たり前、居眠り、早弁…と、もはやどうやって学校に入れたのか、と言える程である。



彼は辺りをきょろきょろと見渡した。そして寝ぼけまなこのままこう言う。

「…先生、また寝ちゃ駄目?」

返事の代わりに拳骨を喰らう。
またどっと笑いが起こった。



「駄目に決まってんでしょ!授業に戻るわよ!!」


先生はもう堪忍袋の緒が切れる寸前である。
…いや、もう切れてんのかもしれないが。




そのまま先生は黒板に向かい、話をし始めた。


「はい、ガーディアンは術者の意志に関係なく術者の危機的状況に駆けつけてくれるものです。ガーディアンは、普段ブローチとして収まっています。これは誰もが持っているもので…」


先生が振り返り、眉をしかめる。

「…ライトはどこへ行きました?」

さっきまでいたはずの少年がいない。

生徒の1人が、
「帰りました」
と返事をした。


三度クラスに笑いが起こった。











彼は既に自宅のある山の中にいた。


「だ〜ってよぉ、ガーディアンなんて無くたって生きていけるじゃんかよぉ」


独り言をつぶやく。
だがその通りだった。

自宅が山中のため、幼い頃から狩りに出されていた。
登校途中でも魔物は容赦なく出てくる。
そのため戦い続けて入るうちに、彼はガーディアンの存在を忘れてしまっていた。



自宅へ直行する。

その時だった。


何か大きな音がした。
振り返る。

すると、魔物が少女を襲っていた。


「おいっ!」

彼は少女に呼びかけ、両腰に入れていた短剣を引き抜いた。

右は順手、左は逆手に持って。

飛び上がり、天を駆け、剣を一閃する。

「旋風斬!!」

振り下ろすと共に衝撃が起こり、魔物を蹴散らした。


すぐさま少女の下へ駆けよる。


「大丈夫か」と言おうとしたが、言葉が詰まってしまった。



金髪のセミロング、ゴスロリに近いワンピース、灰色の目…

何もかも、夢に出てきた少女と一緒だった。
少女はきょとんとした表情で彼を見つめている。

ライトは質問を変えた。


「…名前は、なんて言うんだ?」


すると、想像もつかない答えが返ってきた。


「…名前って、何?」

「…は?」
つい聞き返す。
だが、無理もなかった。

「名前ってのはなぁー…生まれつきついているもので…えーと…」


よく説明がわからないらしく、少女は首をかしげた。
だが、ライトの頭ではこれ以上は説明不可能だった。

「名前がないなら、オレが付けてやるよ!」
立ち上がって宣言する。

「名前…」

少女が聞き返す。
今度はライトが首をかしげた。
数秒後、思いついたらしく、指ならしの真似事をする。


「ネルだ」
灰色の目が大きく見開かれる。

「お前の名前は、ネルだ!」
ライトは少女ーーーーネルに向かって指をさした。




ーこれが、すべての始まりだった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ