novel

□守護者伝説 起3
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ピアナを連れて町を出て、
早半日が経過しようとしていた。


陽が落ちかけ
辺りは徐々に暗くなろうとしている。

その間、町らしき町は
ひとつもなく、
ライトたちは薄闇の広がる山中へ入ろうとしていた。



ネルが無言でライトの服のすそを引っ張る。

ライトが振り返ると
彼女は足を押さえて何かを伝えようとしている。


「ん?歩き疲れたの、ネル?」

リフィーがそれを代弁した。






ネルがそのまましゃがみこむ。

「………痛い……」

蚊が鳴くような小さい声で
彼女が言った。


リフィーがそのまま
中腰から四つん這いになり
彼女の足を覗き込む。



やはり歩き疲れたらしい、
足が赤く腫れていた。



リフィーが無言でイーグルに顔を向ける。


その彼は空を見上げ
それが赤から薄紫に染まっていく様子を見て、

「ここで休みましょう」

と結論をだした。



ピアナががっくりと肩を落とす。


「覚悟はしてたけど…初っぱなから野宿かよ…」


シャドウが彼女のその発言に反応した。


「何だ?やっぱ気になんのか?」

「…オヤジ、オレだって一応女だぜ」


若干呆れた顔で彼女はシャドウを見上げた。



その彼女の目が瞬間的に鋭く光り、その目線が木々や草の生い茂った森へと向けられる。


残りの5人もそちらへと
目を向ける。


その先からは、草木が揺れる音がした。




何か、来る。



全員が武器を構え
戦闘体勢に入ろうとした。


すると、中からは
巨大なライオンが現れた。


薄暗くなりつつあった中でも
目立つ金色の毛並みである。


その場の誰もが怖じ気づいたが、すぐに戦う姿勢に立て直した。



いち早くピアナが駆ける。

「如月っ!!」

刀を抜く瞬間の抜刀術で
ライオンを斬る。

ライオンの目線がピアナに向いた。


大きなスキが出来たところに
ライトが連撃を叩き込む。


「双竜乱舞!!」

ライトの短剣が振り乱れ、
それによりライオンが怯んだ。


間をあけず、
追撃と言わんばかりにイーグルが剣を構えた。


「行きますよ、青嵐剣!!」


辺りに風が巻き起こり、
それと剣のコンボで連撃を決めた。

ライオンは反撃する間もなく
その場に倒れる。


ふぅ、と全員が息をつくと、

更に森から何やら音が聞こえた。

やはり草木をかき分けて
進むあの音である。


「ゲ、またいんのかよ」

ピアナが露骨に言った。


「魔物は1匹見たら100匹いるって言うしねぇ」

リフィーが拳を締め直す。


とその時、中から現れたのは
ライオンではなく人間――――男だった。




男は獣をなめして作ったような原始的な服に、青いニッカポッカを重ねている。


頭はスキンヘッドで
赤く目立つタトゥーをつけていた。

それ以外にも寝不足らしい、
目の下にくっきり残ったクマが目立つ。



敵か味方かはわからない。


ピリピリとした空気の中、
男が口を開いた。



「なぁ。この辺にライオン来なかったか?」



ライオン…

言われなくても、それが
先ほど倒した魔物だと
すぐにわかった。


ライトがそれを言う前に
男は横たわっているものに気がつき、それに駆け寄った。


「…ったく。だから、勝手に出てくんなっつうの」


男がライオンの毛を撫でると、
やがてそれは光となり
その光が収縮したかと思うと
それがブローチへと変化していた。


ライトたちはそれに驚き
戸惑いを見せた。



「それっ…ガーディアンだったの!?」


リフィーがその場で
誰もが思っていたことを口にする。


「見りゃわかんだろ」


男が言う。

確かにブローチとなった今は
それが理解できるが、
そうでなかったら普通に魔物だと思っていた。



呆然としていたライトだったが、ハッとなって男に指を差す。


「てかお前誰だよ!!」


男が舌をぺろりと出して唇を舐め、ニヤリと怪しげな笑顔を見せる。


タトゥーと目についたクマのせいかそれが少々怖く見えた。


「名前はザーク。
ザーク・ワーラトラだ。
職業は盗賊!!
…と言っても、旅人から何か盗る気はないけどな」


そう言いながらザークは
空を見上げる。


空の色が薄紫から闇色に変わっていき、周りの森は木々が揺れて騒がしくなっていった。
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