novel

□守護者伝説 承
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太陽が眩しく照り、
青空がすべての雲を飲み込んで
しまいそうなほど清々しい色をしていた。

だが、少年はそんな光に目もくれず、小さく、薄暗い路地裏にいた。

帽子を目深にかぶり、
まるで自分は存在していない
ように見せるが、
そこからは金に光る髪が飛び出て、彼のチャームポイントに仕立て上げていた。


顔をあげて遥か上空を見る。

白い太陽が輝き、
それが少年の目を眩ませた。


ふと横を見ると、
旅人だろうか、個性的な面々が
笑いながら歩いているのが見える。

その中に、金髪でゴスロリの、
見覚えがある少女がいたのを見て、彼は目を見開かせた。

(どうして、あの子がここに…)

自分の中の疑問をかき消し、
少年は旅人たちの後ろをついて行った。















――――時は、十数分前にさかのぼる。

「…ここだ」

リオンに促されて
一行は小さな港町へと入る。

街自体が海に面しているため、
セルリアでの貿易中心地と言っても過言ではない街…それがマルコムだった。

心地よい爽やかな磯の香りが
風によって流され、鼻を突く。

雲のない一面の青空には、
海鳥が幾つも飛び交っていた。


「ほんじゃ、ここで一休みって訳ね」

そう話すのはリフィー。

それに乗じ、ピアナが

「よっしゃー!!やっと休めるぜぇ!!」

と勢い良くガッツポーズをした。

思えば、夜通し歩き、戦い続けていたのだ。

疲れきった体を委ねるように、
彼らは街中へと入っていった。

















「疲れた!!暑い!!休ませろ!!」

なかなか宿屋が
見つからないのに苛立ったのか
ライトが街中で騒きたてる。

その声に驚いたのか、
前方を歩いていた人々の
何人かが振り返ってこちらを見た。

「我慢しろ!そんなん皆思ってんだから!!」

ザークがライトの口を押さえ
親が子供を叱りつけるように説得する。


イーグルは微笑していたが、
リフィーやシャドウ、ピアナやリオンは呆れ顔でライトを見る。


再び前方を見ると、
先ほどより多くの人間が
後ろを振り返りこちらを見ている。

ムッとしたライトが前へ歩み出た。

「何だよ!こっち見ん…」

と彼が言いかけたところで
ピアナが彼の襟をつかんで
軽く引っ張った。

疑問に思った彼が振り返ると、
ピアナが後ろを指差している。

そこでは、少年が柄の悪そうな男2人に絡まれているのが見えた。


「痛ぇじゃねーか、ぶつかっといて何もナシかよ?」

「す、すみません、あの…」

「あ?聞こえねーよ」



その様子を傍観していた
ライトたちだったが、
段々苛立ちが増してきた。


「ったく、あーゆーの、
ホンットどこにもいるんだな」

以前、ネルが暴君に絡まれた
時のことを思い出しながら
ピアナが言う。

彼女がそう言ってる間に、
ライトが暴君の前へと歩み出た。


「何だァ、お前は?」

少年の、涙であふれた目が
少しだけ大きくなった。

ライトが短剣を引き抜く。

「正義の味方っ!!」

先ほどの男の問いに答えると、
男を思い切り蹴飛ばして
天へと駆けた。

「獣爪斬!!」

上から、短剣を振り下ろし
男の服を切り裂き傷を与える。


ライトは男に再度蹴りを加えて
彼を倒した。

が、まだあと1人いる。

すると後方から、
怒り狂った男が素手で殴りかかろうとするのが見える。

ライトが短剣を持ち直して
男に向かおうとしたそのとき、
さらにその後ろから
炎の玉が飛んできて、
それは男の背中に直撃した。

男がそのまま倒れる。

こんなことが出来るのは
1人しかいないと、
ライトはリフィーに目を向けた。


だが彼女は

「私じゃないわよ」

と即座に返答し、
さらに付け加えるように

「そこの、男の子よ」

と彼に目線を追いやった。

改めて少年を見る。

外見は黄色と赤のボーダー服に、同じく黄色のラインが入った緑のスパッツを身につけ、
帽子をかぶっているのに
寝癖らしき髪が隙間から跳ねでているのが特徴的だった。

その手には剣玉を持っており、
柄(え)の切っ先で
まん丸と赤い玉が輝いていた。


彼は一瞬びくっ、と
肩を震わせたが、すぐに立ち上がって

「あの…ありがとうございます」

と丁寧に頭を下げた。

ライトは目をぱちくりさせる。

「あ、ああ…」

と照れたように顎を掻き、

「でも、お前だってやったんだぜ?」

と付け加える。

少年は、うつむき
赤い帽子から飛び出た
ネルと同じ金の髪を輝かせた。

それから何か考えた
素振りを見せた後、

「あの…ボク、ユルカって言います。その…お礼をしたいので…いいですか?」

と、緊張で固くなった顔で
口を開いた。


後にこの出会いは、
彼らの運命をさらに大きく変えることとなる――――
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