novel

□守護者伝説 承2
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朝だというのに
太陽は目が眩むほどの光量を放出する。

潮が太陽に反射して光る遥かなる大海原で、小さな船がひとつ走っていた。

海が割かれ波がうねり、
磯の香りが辺りに充満している。


ライトは特にすることもなく、
小さな船内をぶらぶらと歩いていた。

歩く度に床がぎしぎしと
嫌な音をたてる。

仲間たちは船内で何をしているのか、何を考えているのか…

そんなことを気にしつつも、
結局答えは出ず自分に苛立ち、
また頭をくしゃくしゃと掻きむしる。

そこで彼ははた、と立ち止まった。


目の前ではリフィーが静かに
読書をしている。

彼女はライトがいることに
気づくと、本を開いたままこちらを向いた。

「なに?どしたの?」

ライトは突然のことに
しどろもどろになりながらも、

「あ…いや、何読んでのかなって…」

そう笑ってごまかしつつ、
リフィーに話しかけた。

彼女は目を伏せ本に焦点を置く。

「戦術書…って言うのかな。
戦い方とか魔法の出し方とかあれこれ載ってるやつよ」

すると、急に彼女の目が輝き出した。

「ね、それで、面白いことが書いてあるんだけど」

ライトもそれにつられ
彼女のもとへ歩み寄る。

「あのね、人間誰しも"究極の力"ってのを秘めていて、それは何かの強い想いが最大限になった時発動されるんだって!!
名を"アルティメット・フォース"って言って…」

彼女が得意げに話すのを尻目に、ライトは机にうっぷして居眠りをしている。

すでに机にはよだれが垂れており、その中に彼は埋もれていた。

「寝るな!!!」

リフィーが思い切り怒号を上げる。

それによりライトの鼻から出来ていた風船みたいな鼻提灯がパァン、と音を立て割れた。

「ったく…あんたなんかに話するんじゃなかった!」

彼女を思い切り怒らせてしまったため、その場にいづらくなったライトはそそくさと逃げ出した。



彼が再び船内をぶらついていると、いつの間にか陽が差し込む甲板に出ていた。


船の舳先(へさき)ではイーグルが海風に当たりながらぼんやりと海原を眺めている。

「イーグルっ!!」

ライトが呼び掛けると
彼はこちらを向いてにっこりと笑い、

「ああ…ライトですか…」

そう言うとゆっくりとこちらへ来た。

「どうしたんですか?」

「いやぁ…特にすることもなく暇だなぁ…と…
お前こそ、何やってんだ?」

ライトが問いかけると
彼はふっと目線を下に向け、

「早く…次の国へ行きたくて…その、眺めていたんです」

彼のその言葉によりライトは
昨日、彼が珍しく喜んでいたのを思い出す。

「そういや昨日も嬉しそうだったな。一体どうしたんだ?」

イーグルはそれを聞いて
軽く目配りをすると、静かに口を開いた。

「…実は、私…自分がどこで生まれた誰なのか、わかってないんです…」

「えっ?」

ライトは眼を開いてそのまま固まった。

潮風が吹いて、ライトの髪がそれによりさわさわと揺れる。

イーグルは尚も続けた。

「リフィー様の、お母様から聞いた話なんですが…
どうやら私は、5歳の時に魔物に攫われ、それで…今は亡きリフィー様のお父様に助けられ、そのままあの家に住むことになったんです。
だから…わからないんですよ。
自分がどこの誰なのか…」

その話にライトは目を丸くした。

「で、でもよ、それが何で別の大陸から来たってコトになるんだ?
もしかしたら、同じ土地にいたかもしれないのに…」

「それはありませんよ」

イーグルはそれをすぐに否定した。

「こちらの土地では…見かけない魔物だったらしいんです。
それに、私にはこれがありますから」

そう言って、彼は手甲を外す。

そこには、くっきりと星形のアザが写っていた。

「ですから、もしかしたら…
これを見せれば私がどこの誰かわかるかもしれないんです」

ライトはそれにうんうんと頷き、

「なるほどね。自分が一体誰なのか知るいい機会かもしれないから…
だから楽しみってコトか」

「はい!」

イーグルは顔に笑みを浮かべ
しっかりと頷く。

「私自身、親の顔というものを知らないので…
それに、絶対心配していますよね。だから、早く安心させてあげたくて…」

微笑みながら話す彼に、
ライトは彼の頭を手をぽんぽんと優しく叩いた。

「会えるよ。絶対」

「はい!!」

そう言って彼はにっこりと笑う。


だが、そこで待ち受ける現実が
彼の運命を大きく狂わせることになるのを、彼はまだ知らない…
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