novel

□守護者伝説 承3
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あの戦いから半日が経ち、
暗くなった小さい部屋に窓から星たちの光が流れ込んだ。

月明かりが窓から差し込み、
眠るリフィーの頬を白く照らす。

彼女の艶やかなブラウンの髪が
月の光に反射した。


イーグルは神妙な面持ちで
ベッドに眠るリフィーを見つめている。


目の前で眠る彼女は、
未だにどこか悲しげな表情を浮かべている。

それを見ていると、
心が痛く締めつけられた。


その時、ぎぃっ…とドアが開く音がして、そこから電灯の光が漏れこんだ。

扉と壁の隙間には、
ライト、ピアナ、ザーク、ユルカの4人がぴったりと張りついている。

やはり容態が気になるのだろう、皆、表情が自分と同じようだった。


「…まだ、眠ったままなの?」

ユルカが不安げに尋ねる。

「…はい」

一呼吸おいて、彼は返答した。


「……そっか」

こちらも少し間を置いてから
ユルカが言葉を発する。


その言葉の後、ゆっくりと
電気の光が狭められ、扉が閉じられた。


再び、長い静寂が訪れる。


彼には、ただ彼女を見つめることしか出来なかった。


情けないと、つくづく思う。

昨夜、自分にもっと力があれば、彼女は攫われなかったのでは…?

彼女を助ける時だって、
自分がもっとしっかりしていたら…


心が痛む。

その痛みに耐えきれず、
彼はリフィーから視点をずらしてそれを床へと向けた。

と、その時だった。


「うぅ…ん……」

その声に、彼はばっと顔を上げて視点を元に戻す。

リフィーは小さく唸った後、
静かにまぶたを持ち上げた。

瞳の焦点はまだ定かではなく、
ぼんやりと陰がかかっている。


「……あれ……私…」

彼女は寝たまま首を動かし、イーグルに目を向けた。

「イーグル……?」

少しずつ、だがはっきりと、
目に光が蘇ってくる。


「リフィー様っ…」

口元が思わず緩んだ。

涙が、こらえきれずに頬を濡らす。

生きているとは言え、
このまま眠ったままと言うのは、彼にとっても耐えきれないことだったからだ。


リフィーは目をイーグルに合わせたままむっくりと起き上がる。


「まだ、寝ていた方が…」

イーグルがそう話しかけるが、それには応えず彼女は今までの経緯を記憶の中から辿る。


そして、全てを悟った。

そう思った瞬間、
彼女の目から涙が溢れる。


「…っ」

イーグルはそれを見て、
再び顔をしかめた。


「すみません…私が…」

彼はうつむいて自分を責めるような口調で言う。

リフィーは、ぶんぶんと首を振って下を向いた。

涙がぽたぽたと垂れ落ちて、
シーツを点々と濡らす。


「違うよ…そうじゃない…」

涙声のまま、彼女は言った。

「私…魔力、無くなってるよね…?しかも、すごく…」

それでイーグルは、ハッと気づいた。

リフィーがガーディアンの生け贄にされて魔力を吸われたことは、ライトから聞かされていた。


「…いくら白魔法使いの末裔とは言え、魔力は無限にある訳じゃない…
回復にも、時間はかかる…
何をされたのかは知らないけど、こんなに無くなっているなんて…」

彼女は体を震わせて
自らの手を見つめた。

イーグルも悲しげな表情で
彼女の話を聞く。

「魔法使いが魔法を使えなくなったら、ただの人間…
これじゃ、みんなの足手まといになっちゃうよね…
だから私、私…」

彼女はそれ以上何も言わず、
ただ子供のように泣きじゃくった。

その彼女を、イーグルは無言で抱きしめた。


慎重に言葉を選び、
そして話しかける。

「でしたら、もういいですよ…」

彼女の涙が、一瞬だけ止まった。

「それなら、私が貴方を守りますから。
またガルドが貴方を狙うようなら…何があっても守ります。
ですから、少しくらい、甘えたっていいんですよ。
必ず、必ず…守ってみせます」

それを聞いた彼女の目から
再度、大粒の涙が零れ落ちた。


「うっ…うわあぁぁああん。
ああ〜〜〜………」

泣きじゃくる彼女の背中を、
イーグルはぽんぽんと優しく叩いた。


月の光が冴え渡り、
優しく2人を照らし出した。
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