novel

□守護者伝説 転
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長かった山間部を抜けると、
ようやく自然色とりどりの景色が目に飛び込んできた。

太陽は海の向こうに落ちかけ、海が鮮やかな橙色に染まっている。


そんな中で、ライトがぼそりとつぶやく。

先ほど、最後にコーダが言ったことが、一番頭に引っかかっていたからだ。


「親友…ねぇ…」

それに反応したネルが
ライトのほうを向く。


「親友だったら、止めるべきなんじゃないか?
トロイがやってる事は、
紛れもなく悪行なんだしさ」


リフィーが、それに口を割って入った。


「そこは深くつっこまない方がいいんじゃない…のかな。彼には彼なりの事情があるのよ、きっと」


リフィーのその一言に、
シャドウが続けるように言う。


「あのな、ライト。友人関係ってのは複雑なんだ。
アイツが奴のことをどう思ってるかは知らんが…やっぱり、裏切れないし、失いたくないモンなんだよ」


彼が言い終わると同時に、
ピアナが顔を出す。



「へぇー。オヤジがそんな事言うなんて、意外じゃん」


「悪かったな」

照れるように、シャドウが言う。

…と、その時だった。



草むらがざわついたと思うと、そこから蛇の大群が現れた。

ひとつひとつが「シャアァァァッ!」と威嚇をし、目を光らせこちらへ猛スピードでやってくる。


「な、なんだぁ!!?」

ライトが、思わず声を上げた。


「いいから武器を構えろ!!」

いつも冷静なリオンが珍しく焦るように言う。

ザークが魔法を唱え始めた。


「デスショット!!」


闇の魔法だ。

名の通り、その黒く長く伸びる帯は、蛇たちを次々に殺していく。


蛇が怯んだ隙にそこへ、ライトたちもなだれ込む。


「こいつぁ猛毒だかんな!!
くれぐれも咬まれんなよ!!!」

シャドウが叫んだ。


魔法が使えるリフィー、ユルカ、リオン、ザークはその大群から離れ、順に詠唱をし始めた。



その場に斬られた蛇の血が飛び散り、魔法でその肉体は消し去られる。

だが、それでもしぶとく
生き残った蛇たちは、次々に
飛び出し再び攻撃を仕掛けてくる。


「こんにゃろっ!!」

ピアナが刀を一閃し彼らを退けた。

数はだいぶ減ったが、
それでも彼らは怯まずに
突撃してきた。


「おぁぁっ!!飛空閃・風車!!」


ライトが回転しながら
蛇を一匹一匹倒していく。


だが、それでもダメージが
浅かったのか、一匹の蛇がライトへ向かって飛び出した。


唾液を撒き散らしながら、
むき出しの鋭い毒牙を光らせて突出してくる。



しかし、気付いた時には
蛇はこちらへ向かって突き進んでおり、防ぐことも避けることも出来ない。


「ライトっ!!」

ユルカが叫ぶ。


駄目だ…間に合わない。


そう思い、ライトが目を閉じて尻餅をついた…




その時、だった。

死を覚悟したのに何も感じないことに違和感を感じ、恐る恐る目を開けると、
そこには、あの金髪の少女…ネルがライトを守るように立っていた。


そして蛇は当然
ネルの右腕に喰らいついており、彼女の白い腕からはそれによる出血がだらだらと垂れている。


「ネ……ル……?」

ライトが目を見張って
彼女のことを見つめる。


「くっ…」


ネルは何とか痛みに耐えながらも蛇を右腕から引き剥がそうと、蛇の胴を引っ張っていたが、一向にそれは離れてくれそうにない。


それを見て、それまで呆然としていた他の仲間たちも
我に帰り、慌ててネルの下へ駆け寄る。



「ネルっ!!」

「おい!!しっかりしろ!!」

「ネル!!」

各々が、彼女を心配するように呼びかける。

イーグルが彼女の腕でもがいていた蛇を引き離し、持っていたタオルを彼女の腕に巻きつけた。

ネルは、大きい深呼吸のような辛い呼吸を繰り返し、
体中から汗を流している。

ライトは、そんな彼女を、
ただ見ることしか、出来なかった。
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