novel

□守護者伝説 転2
1ページ/11ページ

潮の香り、打ち立てる波の音、眩しいくらいに光る太陽。


揺れる船の中で、ライトは目を覚ました。

…しかし、眠気は覚めておらず、いまだ夢うつつではあったが。


疲労により体は起こせず、
寝心地の悪い木の床に毛布をかけて寝そべったまま、
白い天井に、目を映していた。




すると横に、あの少女が腰掛ける。


黒いゴシック調のロリータ服…間違いなくネルだった。


「…あの、おはよう、ライト…」

ネルが、小さな声で細々と話しかける。


それにより現実へ一気に引き戻されたライトは、がばっと起き上がった。


「ああ、おはよ」

そう笑顔で言うと彼は、
大きなあくびをして頭をぼりぼりと掻く。

その涙目になった視線の先には、ネルと同じ金髪の、あの少年が立っていた。


未だに気難しい表情をしていたが、すぐにふっと笑い、こちらへ歩んできた。


「おはよう、ライト…」

ライトはユルカを見ると、
ゆっくりと微笑んで立ち上がった。


「ああ」


「まっーたく、平和な連中だねぇ」


すると、女の声がした。

低めのこの独特な声は…ゼスである。

彼女は操舵室で、船の舵を
次の町…ペインに向けて走らせていた。


「ま、平和なほうがいいんだけど。昨日は大変だったろ?」

今まで座っていたリフィーが
ゆっくりと立ち上がる。


「大丈夫よ。みんな、イーグルの治療魔法を受けたから」


「ふぅん。で、そのイーグルってのは?」

ゼスのその問いに、
リフィーがくすりと優しく笑う。


「甲板にいるわ。次の大陸が楽しみなんだって」


ゼスがそれを聞いて、
にぃっと歯を見せて唇を吊り上げた。


「へーぇ。んじゃ、最高速度で行くよ!!」


板が重なって出来た床に寝そべっていたピアナが「げっ」、と嗚咽を漏らす。


「待て、ゼス!!オレは…」

「だーいじょうぶ。すぐ着くから!!」


すると、彼女の背中を、シャドウがげしっと蹴った。


ピアナが再び唸る。

そして、青ざめた顔になり、口を手で押さえた。


その反応を見たシャドウが葉巻をふかして、

「船酔いしたろ、お前。もう少しなんだから我慢してろ」

と言った。


ピアナが一度起き上がる。。


「あ〜気持ち悪い…」

どうやら、図星らしい。

彼女はその青ざめた顔のまま、ごろりと寝そべった。


隅で大人しくしていた
リオンが、頬杖をついて小さなため息をひとつ。



「がーっはっはっは!!
意外と女らしい一面もあるんじゃねぇか、ピアナ」


ザークが心配もせず床に這いつくばるピアナを見て大笑いする。

「…あとで…覚え…てろよ、てめぇ…うっ」

ピアナは青ざめた顔のまま、
ザークを見上げた。


その様子を見て、ネルがくすりと笑う。



それに気づいたライトが、
ネルに顔を近づけた。


「楽しいか?ネル?」

ネルがこくこくと頷く。


「みんな…楽しい…私、みんなと出会えて、良かった…」


彼女の頬が赤らむ。

ライトがそんな微笑ましい光景を見ていた時、甲板からバタバタとこちらへ向かってくる足音がした。



当然、イーグルである。


彼は頬に紅を浮かべた嬉しそうな表情で、息を切らしながらこう言った。


「皆さん!!そろそろ着きますよ!!」

それを聞いたピアナが、
寝返りを打って大きくため息をついた。


「やぁ〜っとかぁ…」


長い船旅で疲れていた彼女には、朗報だった。


すると、ゼスが船の舵を器用に回し、港に船を着けた。



「おーい、着いたよー」


彼女の声が前方から聞こえてくる。


大きな期待を抱え、
ライトたちは船から降りた。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ