novel

□守護者伝説 転3
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「じゃあ、ありがとうございました」

「うむ、気をつけてな」

「また会おうな!ライト…」

リフィーがぺこりと頭を下げ、
アグラとゼスが順に別れの言葉を告げる。



ライトはネルの手を強く握ったまま放さない。

リフィーにガルドの目的…
ゲドーの真の狙いを告げられてから、彼女を失うのが怖くなったからだ。


『ゲドーは、ネルを捕食するために…』


リフィーが言った言葉が
耳に強く突き刺さる。

ライトは頭を掻きむしり、
未だ頭に残るそれを消そうとした。


「んで?」

シャドウが、そんな空気を打破しようと口を開く。


「ここを出たら、どこに行くんだ?」


「ミレット」

ザークが、即答した。

「でかい王城がそびえ立っている所で、城全体が街になっている、変わった所だ」


「お城の中に…街?」

リフィーが、首を傾げる。


「え、でもそれって、すっごいロマンチックじゃね?」


ピアナが、きらきらと輝く瞳でザークに詰め寄った。

「…お前って意外とロマンチストなのな」

「悪いかよ!!」


ピアナは女の子らしく頬を赤らめ、ザークの前をつかつかと歩いた。


「ただ…」

一番後ろにいたリオンが、
重そうに口を開く。


「この先にある、あの迷いの森…通称、魔森を抜けなければいけない」


「まもり?」

ネルが、首を傾ける。


「ああ。何でも、一つ一つの木々がそれぞれ生命力を持っていて、それらが動く森らしい。だから、迷いの森。そこを抜けなきゃ、ミレットにはつかない」


「…そんなトコ、どうやって抜けろっていうの?」

リフィーが不機嫌そうに
草が絡む道を踏みしめながら尋ねる。


「知らん。昔、オレのオヤジから聞いたんだ。
だから、入るな…としか知らない。
元々オレはミレット出身だから、このあたりは詳しいほうだと思うぞ」


初めて聞いたその事実に、
仲間たち全員が目を丸くする。


「…そうだったの?」

ユルカが、リオンを見上げる。


「ああ。ミレットの王に命令され、オレは家族と共にカルテッドに派遣された…それだけさ」

リオンは、その後自分の身に起きた悲劇については、口をつぐんだ。


父親が殺され、街が焼き払われ、自分も指名手配されて…


辛くないはずがない。


だが、彼は感情を押し殺し、
その後は、草の絨毯の上を
淡々と歩くだけであった。


「でもよ、そこを抜けなきゃ、ミレットには着かないんだろ?」


シャドウがそう尋ねて葉巻を口にくわえ、火をつけた。


灰色の煙が、空へ上がりヤニの臭いを残してふわりと消えていく。



「そうだ。道はそこしかない」


リオンが歩きながら説明する。

一歩ごとに、長い銀髪が、波打つように揺れた。


「だったら、行くしかねーじゃん」

ライトが振り向きざまに
ニッと笑う。


「だって、ここを抜けた先に、あとひとつ…ガルドのアジトがあんだろ?だったら行こう。鬼が出ようと、蛇が出ようと」


「そうですね」

リフィーの横をぴったりとついていたイーグルが横目でライトを見る。

「行きましょう…魔森へ」


彼がそう言うと、目の前には
木々が生い茂った場所が現れた。


木の一本一本が、天へと向かって伸びているようである。


それは、清々しさより、
どこか禍々しい何かを感じた。


「いつの間に…」

リフィーが、驚いたような表情でその森を見つめる。


「だから、木々が動くと言っただろう」

リオンが、銀髪をなびかせながら一番先頭へ躍り出た。


「一つ忠告しておく。
この先、何があってもはぐれるな。はぐれたら…終わりだ。ましてここは、凶暴な魔物が棲みつくところだからな」


それだけ言い残すとリオンは、
魔森の中へと姿を消した。


彼の言葉に怖じ気づきながらも、全員、彼の後を追い、中へと足を歩み入れた。
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