creation

□文化祭にあたって (ハートキャッチ)
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それは、昼食をしていた時に、友人の来海えりかが放った言葉。


「えっ?ハロウィン?」

最後の一文字が、
隣にいた柔らかな赤髪の少女、花咲つぼみとかぶった。

自分の真向かいに座っている先輩、月影ゆりはと言うと、
ただ一人もくもくと弁当を食している。



えりかは、勝ち誇ったような蒼い瞳で、ニヒヒン、と笑った。



「そう!今年の文化祭のテーマは、ハロウィンパーティーなのだーっ、イェーイ!」

彼女は目に大粒の星を瞬かせると、ファッション部部長としてなのか、1人で盛り上がっていた。


恐らくは彼女の母親譲りの、
天然パーマの緩やかな髪が
ふわりと花びらのように舞い上がっては落ちる。



「それで?」

落ち着いた雰囲気を漂わすゆりが、えりかに訊き返す。

「今年は、私たちはどうすればいいのかしら?」


夜の闇に溶けていきそうな深い鼠色の瞳が、 「変身した後のあの格好で出るのは嫌よ」 とでも言っていそうだった。


ちなみに去年の文化祭は、
大蛇の名前をもじったナルシストな男のせいで歯車を狂わされ、
結局、えりかの提案で軽音楽部とファッション部の融合という、前代未聞のショーが出来上がった。


今年はもう、その心配に悩まされることはないのだが、
えりかの考えは突拍子がないため、若干の心配があった。



えりかは指を安定させることなくぶんぶんと振ると、

「ご心配なく。今年は去年以上の盛り上がりを見せるようなショーを作っちゃいますからっ!
そのために服作ってんだよね、ねーつぼみ!!」

突然振られたつぼみは、
肩を大げさに上下に動かすと、
多量の汗を流した。


「はっ!はいぃ…。
でもわたし、えりかほど器用じゃないですから、その………」

もじもじと手を隠している彼女の指には、絆創膏が何枚も貼られている。


いつきはそれを見て、優しく微笑んだ。


彼女はまた生徒会長になったため、ファッション部に顔出しすることは少ない。


それでも、彼女は自分を変えてくれたつぼみやえりかに、感謝の意を持っていたため、出来る限りの努力はしたかった。


「わかった。今日はぼくも、手伝うよ」

「ホッ、ホントですかぁ!?」

「うん。ハロウィンってことは、魔女とかカボチャの衣装を作らなきゃいけないんだよね?
ぼくにも出来ることがあったら、やらせて」


彼女はつぼみに笑いかけると、絆創膏だらけの彼女の手を握った。
 

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