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□真央の1日 (MIXIM)
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いつものように目が覚めて、いつものように顔を洗い、いつものように朝食に至る。

今日は友達2人とやっている交換日記の番がきてるんだっけ、なんて思いながら。

学校ではいわゆる 「ハデ系」 メイクを施しているが、
普段の私は一重で幼さの残る顔立ち。

まぁ、学校では女子からの人気は高いが、一部の男子からはメイクのせいで 「先生」 と呼ばれることもある。


好きな人が…いない、わけじゃない。

ただその人は、学校の私じゃなくて普段の私を好きになってしまっている。

嬉しいが、気づいてくれないという複雑な心境だ。


申し遅れた、私の名前は九條真央。


私立天乃川学園の1年B組在籍、学級委員長である。




















結局、行く所が定まらない私は、オタクにとって聖地と呼ばれる場所に来てしまった。

彼は……

くまなく探しているが、
まるで見当たらない。

周囲はゲーム音が全てを支配し、声を発しても綺麗にかき消される。


ノーメイクで行ったのは、
この姿なら彼も気づいてくれるだろう、という期待を馳せたからだが………


(いないんじゃ、話にならないか)

はぁ、とため息をついて、
帰ろうとしたその時。



入れ違いに、黒髪でメガネの男子が入ってきた。

「竹蔵くん!!?」

慌てて振り返って顔を確認するが、そばかすがあり、目も彼よりずっと小さい。


「え…………?」

彼は驚いたように目をぱちぱちと瞬かせ、ぽかん、と間の抜けた表情をとる。


人違いのようだ。

「すっ、すみませんでした!!勘違いしちゃって……」


私は恥ずかしそうに顔を赤らめると、走ってその場をあとにした。

顔が火照ってる。

暑い。


(何を期待してたんだろう…私ってば………)


恥ずかしさと、焦がれるような恋心の狭間で揺れ動く。


私は……………


「あっ!!」

目の前で横にいた人にぶつかる。

考え込みすぎで、
周りが見えてなかったらしい。

「ご、ごめんなさい!!
大丈………」

と、声を掛けようとした時、私は固まった。

青みがかった長めの黒髪、
海に溶けていく瞳、
メガネをかけていても整った顔立ち………


彼…参宮橋竹蔵だった。


だが、声をかけようとした次の瞬間、彼は多量の鼻血を出して卒倒した。


「きゃ―――――――っ!!
竹蔵くん!!」



















…結局………

辺りが茜色に染まるまで、
私は彼の看病をすることにした。


看病、といっても鼻血による貧血なので、止血をして公園で膝枕をするのみ。


ティッシュとハンカチを渡して、しばらく彼の温もりに浸っている内に、
いつの間にか何時間も経過していた。

彼はそんな私の気持ちにも気づかずに、幸せそうな表情で寝ている。


それを見て、なんだか憎らしくなった。


私はムッとした表情でハンカチを土産に置いてくると、くるっ、と振り返った。


「次に会うまでに気づかなかったら…許さないんだから」

べぇー、と舌を出して
小悪魔のように微笑む。

端から見れば休日を無駄にしたようにも思えるが、
私にとってはかなり充実した1日となった。


(これ…今日の交換日記に書こうかしら)
 

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