creation

□のばら (DDFF)
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ルフェイン。

そこは、二柱の神によって成り立つ世界。


調和の神コスモス、
混沌の神カオス。


そこは、終わりなき神々の戦いが刻まれ、
そのための駒として、あらゆる世界から戦士が召喚されている。

かく言う私もその1人だ。

閃光の異名を持つ女剣士。



名を、ライトニング――――――





















気がついた時、私は仲間と共に聖地にいた。

見慣れぬ者ばかり、
これで大丈夫なのか。


これが何度目の戦いなのかは知らない。

ただ、私と仲間たちは、
神々の戦いに利用されているだけ。

ただそれだけ、なのだ。



コスモスから力を与えられ、
戦いへと旅立つ。

こんなことが、前にもあったような気がした。



後ろから、鎧を着た誰かが走る音が聞こえる。

振り返ってみると、
そこには予想通り鎧と、プラス武器を多量に身にまとった20代前半の戦士が現れた。


失った記憶の中、のばらに強い憧れを持つ青年。


フリオニールだ。


「ライトニング」

「私に何か用か?」

「いやぁ、用って訳じゃないんだが、ライトは、どこ行くつもりなんだ?」

「決まってるだろう。
イミテーションが蠢くひずみの解放をしにいく。
使命はそれだけだ。
それはお前も同じじゃないのか?」


イミテーションとは、
この世界の駒、即ち二神が召喚した戦士を真似た奴ら。

ラグナ・レウァールが敵から入手した話によれば、
そいつは次元の狭間から無限に生産されているらしい。

それは敵、カオス陣営も快く思ってないらしく、
一部の奴らを除けば疎ましく思っている、とのこと。


そいつらが集まり、空間を支配したのがひずみ。

イミテーションを倒すことで扉は開かれ、新たな地へと進むことが出来るのだ。


また、ひずみの中では歴戦の戦士たちが今まで踏みしめてきた戦いの舞台が用意されている。

それは、コスモスのいる秩序の聖域、
カオスのいる混沌の果ても例外ではない。


今いる秩序の聖域はかなり広く、コスモスからかなり離れた地でもまだ続いている。



フリオニールはぐ…と頷くと、私にあるものを見せた。


「…のばら?」

それは、失われた記憶の中で、彼が見つけた夢。

スコール・レオンハートに聞いた話では、
ラグナが『野原に落ちていた薔薇だからのばら』という途方もない勘違いから始まったものだが、
今の彼を支える糧となっている。


「この世界を、のばらが咲き誇る世界にしたいんだ。
だから…………」


『お前な』、と言おうとした時に、空気の読めない足音が聞こえた。

バネが地面を跳ねる時の、あの不快な擬音。


「まぁやだ。頭の中までお花畑なのぉ?」

甲高い声で、馬鹿にしたように言い放つその声。

まんまピエロの外見に、
壊れた心を持つ魔導士。



その見た目に、声色に、性格に、吐き気がした。


異名は幽玄の道化、ケフカ・パラッツォだ。

「お前、何しに来た!!」

フリオニールの顔つきが変わる。


その問いに、口を抑えて笑いをこらえるケフカ。


「何しに来たって?
決まってるじゃない!!
調和の神を、壊しに来たんだよォ!!!」

破壊に飢えた道化。

いちいち高低差が激しい声に、
益々苛立ちが募った。


私はフッ、と自重するように笑う。


「冗談は顔だけにするんだな」

「あぁん?女剣士が何言ってんの?」

「お前を見てると吐き気がする。さっさとこい」


いくら心の均衡が乱れた道化でも、ここまで言われれば黙ってられないらしい。


「虫ケラが…舐めやがって……その身も心も壊してやるよォ!!!」


ケフカが曇天を見上げると同時に、多量の火の玉が降り注ぎ、こちらへ向かう。

メテオだ。

精神に異常をきたしている代わりに、その特異な魔法は、相手を翻弄する。


「ガ〜〜〜〜〜〜っ、キィ〜〜〜〜〜〜」

まるで黒板を爪で引っ掻いたような、奇っ怪な声を上げる。

大地を蹴り飛ばして飛び上がり、斬鉄剣を構える。


「捉えてみせろ」

そして、空中でロールを切り替え、斬り込みをかけた。

斬り、蹴り、銃をかける技。

シーンドライブだ。

「えぇいっ、消え失せろ!!」

そのまま宙返りをして奴を後方へと吹っ飛ばした。

受け身をとるとき、 「あぁんっ」 と情けない声を上げる。

奴は狂気に満ちた目で私を睨むと、くるくるとその場を回り出した。


「……!!いかん、ライト後ろだ!!」

フリオニールの声で、
ようやく雷が複数落ちていたことに気がつく。


「踊れ、踊れ〜ぃ♪」

弱い稲妻だったが、
牽制をかけてダメージを与えるには十分だった。


「あっ!!」

肩に裂傷が走り、
熱と共に痛みが走り抜ける。


調子に乗ってくるくる回りながら雷を連発する奴の体に、
電撃を帯びたナイフが纏わりつく。


「加勢しよう、ライト」

「ああ。助かる!」

そのままフリオニールは一瞬でナイフを手繰り寄せ、
数多の武器を振り回して傷を与える。


だがケフカはそれをものともせずに、フリオニールを睨みつけ、背中に携えた鋭い翼を出した。

「なめんな」

いつもの数十倍低い声で、
はかいのつばさを繰り出すケフカ。

「ぐぁっ!!」

ついさっきナイフで手元へと寄せたフリオニールには、避けられずにその翼をまともに食らってしまった。


「っ!!」

「こ〜れ〜だから止められん……」

私の心配をよそに、
狂ったように笑うケフカ。


しかし、舐めていたのはケフカも同じなようで………


「あん?」

彼の体には、まだフリオニールの電撃ナイフが彼の体を締めつけていた。


吹っ飛ばされながらも、
態勢を整え再び手繰り寄せ、そして突きを食らわせる。


「ライト!!」

「わかってる!!」

私は刃を2つに分かつと、
そのまま道化に向かって突進した。


「どこを見ている」

そして、舞い散る薔薇と共に奴を斬り裂いた。


奴の体に、光爆が起こる。


「うっ…そォォん………」


そして奴は、そのまま次元の狭間へと消えていった。

戦闘が終えた中、
フリオニールは空を舞う薔薇に目を輝かせた。


「のばらだ………」

「ん?…あぁ、お前は知らなかったな。私が決め技を使う時、何故か出てくるんだよ。
だから私も、どうやら薔薇には縁があるらしい」

私の説明にも耳を傾けず、
散っていく花びらをそっ…と手にとるフリオニール。


「これ、持ってていいか?」

「は?」

「これは…俺の夢だからかな」

そう言うフリオニールに、
私は少しだけ口端を吊り上げた。


「面白い奴だな」

こういう仲間なら、退屈しなさそうだ。

私は本気で、そう思った。
 

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