creation

□フリオニールvsセフィロス
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周りは、ふわふわと浮かんだ足場と、鈍い光沢を放つ一面の璧だけだった。

このフィールドの名は『星の体内』。

クラウド・ストライフ、セフィロスの両名がいた世界のものだ。


目の前には、女と見紛うほどに長く、繊細な銀髪を携えた端麗な男が佇んでいる。

形(なり)はともかく、全身の黒い服装からは彼の恐ろしさが滲み出、なびく髪からは覇気すら感じられた。

彼の身長はゆうに超えるだろう細く長い刀を持つその様は、彼が歴戦の戦士であることを物語っていた。

「はーっ、はーっ、はぁ…」

疲弊と痛みに苛まれるなか、自分は武器のひとつを取り出す。

先ほど、クラウドと戦ったことが、
現在の不利な状況に繋がっていた。

あの時はクラウドの頼みもあり、全力とはいえ致命傷に繋がらないよう戦っていた。

だが今は違う。

自分は"コスモス側"、
相手は"カオス側"。

彼は当然自分を殺すつもりで来ているだろうし、
自分もそのつもりである。


フリオニールは、ふらつく足取りながらも、果敢に立ち向かった。

ナイフを持ち、電撃に乗せ、セフィロスに向かって投げつける。

それは奴の腕に絡み、フリオニールは引っ張ってこちらに引き寄せた。

締め付けられた部分から、
血がばっと噴き出るのが見えた。


ある程度距離を縮めたところで、思いきり体当たりを喰らわせようとした。

が、奴はこちらの頭をつかみ返すと、堕天の笑いを見せて語りかけた。

「知っているか?零距離ではこちらにも利があるということを」

ブン、と耳の奥で音がして、体が壁に激しく打ちつけられる。

「が…っ、はッ……」

背中がびりびりと痺れ、
力が入らずにずるりと落ちた。

(強い………)

勝てないかもしれない、と頭で弱気な自分が話しかけた。

焦りを纏った心臓の声が体中で鼓動している。

だが、負けられない…

フリオニールは相手を睨みつけると、
全ての武器を投げつけるマスターオブアームズを繰り出した。

「おおおおおッ!!!」

だが外してしまい、
「くっ…」と漏らして武器を取り込んだ時、首に圧迫感を感じた。

セフィロスが片手で掴み上げているのだ。

「ぅぐっ…がぁっ…」

足が地面から離れ、空中浮遊体験をする。

苦しさのあまり涎が垂れた。

自分は筋肉質だし、さらに重い鎧を身につけている。

なのに、奴はそれを片腕だけで掴んでいるのだ。

化け物だ…そう感じた。

その時、懐からはらり…と何かが落ちた。

「!!!」


セフィロスはそちらに目を向けると、自分を放し"それ"を拾い上げた。

「…なんだこれは?」

小さな、一輪の薔薇。

フリオニールの夢。

のばらだ。


「やめ…ろ…ッ、返せぇっ…」

伸ばした手を、踏みつけられた。

痛みよりものばらに手が届かないのが、悔しくて悲しくてたまらなかった。


行動で察したのか、セフィロスが哀れみの目を向ける。

「これが、お前が戦う理由か?」

図星のため、何も言い返せない。

「実に滑稽だな。こんなものに縋(すが)り、生きるとは…」

セフィロスが手を退けるが、立ち上がることは出来てもやり返す力などもう残っていなかった。



「フリオニール!」

声がしたほうを振り向く。

一筋の光が差し込んだ。


とてつもなく高く、鋭い兜。

シルエットだけで誰かわかった。

ウォーリアオブライトだ。

彼は鋼同士をうるさく侍(はべ)らせながら、自分の前に立った。

「よくやった、後は私に」

「しかし!」

間髪いれずに返す。

これは自分の戦いだとか、
のばらを取り返すんだとか、
貴方に迷惑かける訳にはいかないとか、
色々意味の含んだ言葉だった。

が、彼はこちらを流し目で見ると、

「君は、仲間のことを頼む。
クリスタルへの道が、閉ざされぬよう―――…」

「………………!!」

その言葉に、自分は見失いかけていた目的を取り戻した。

目を閉じて、考えること数秒。

「…わかった」

小さくそう言うと、自分はその場から退散することにした。

情けない話だが、現状では勝てないというのも事実である。


(……頼んだぞ、ライト)

フリオニールは、心の中で声に出さず激励した。




―――――――――

「新手か」

セフィロスが、低く覇気のある声で私を威嚇する。

「私と戦っても、クリスタルは手に入らんぞ」

一呼吸だけ置いて、私は奴を睨みつけた。

「だろうな」

「ならば、何故私の前に立つ」

理由は決まっていた。

嫉妬と怒りの炎を瞳に宿す。


「お前は仲間を傷つけた」

自重気味にセフィロスが笑う。

「フッ…許せない、と言うわけか。
一時の感情で勝負を挑むなどと―――」

「始めよう」

話を途中で切り、こちらから先制する。

「早く済ませたい」


彼は唇を上げると、長い刀を頭の上で構えた。

「フフ…少しは楽しめそうだ」

戦いのゴングが、音を出さずに鳴り響いた。
 

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