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□カゲロウとタカシとアキラ(クロビ)
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「はぐれ狼の掟その1…」
「仲間は信じない」
「…そいつは、今日限りで封印だ」
クロスファイトの会場で、吹っ切れたように拝カゲロウは笑った。
御代カモンとガルバーンの言葉に、感銘を受けたからだ。
今までに見たことの無かった絆。
それが、カゲロウのひび割れた心に染みたのだ。
勝利して喜ぶ赤髪の少年が目に入る。
だが次に、カゲロウは目を鋭くした。
「だが、オレにはまだ…」
やらねばならない事が残っている。
自分を倒しはぐれ狼にさせた相手、不知火ビャクガに雪辱を晴らすこと。
あの強敵を超えるために…
「カゲロウ」
と、そこに聞き慣れた少年の声が飛び込んできた。
ハッと息を呑みそちらを見ると、自分を裏切ったかつての仲間、タカシとアキラが立っていた。
一気に憎しみが蘇る。
「お前ら…」
歯を食いしばって彼ら2人に憤怒と侮蔑の目を向ける。
彼らは互いに目を合わせて頷くと、揃って頭を下げた。
「「ごめん!!」」
その意外な態度に戸惑いつつも、カゲロウは怒りを口から吐き出す。
「謝って許されるとでも思ってんのか!!!お前らの…お前らのせいで…」
「聞いてくれ、カゲロウ!」
気弱なアキラのほうが、困り顔のままこちらと向き合う。
「お前は信じてくれないかもしんないけど、あの時お前に渡したのは、マスターガーディアンズに言われたやつじゃないんだよ!!」
「なっ…………」
信じられない事実を突きつけられ、カゲロウの目が泳ぐ。
だってあの時…あの時、ヴォルグの言葉に押されて2人を追ったら、マスターガーディアンズと密会して…
「あれ、ホントはオレのスマホなんだ」
ツンツン頭のタカシが、目を伏せたまま話す。
「う、嘘だ…じゃあ、お前ら、なんで…」
混乱して言葉がちぐはぐになる。
もはや自分でも何を言ってるのかわからなかった。
アキラが畳み掛けるように話す。
「マスターガーディアンズの、ハガタキって奴に交換条件を持ちかけられた時、心が揺れたんだ。でも、お前は裏切れない。だから、2人で相談して、あの発信機を犬の首輪とかに付けといて、お前には別のものを渡す」
「そうすりゃ、マスターガーディアンズを騙せるんじゃないかって思ったんだ…」
タカシが言葉を詰まらせる。
いつの間にかアキラも嗚咽を混じらせて泣いていた。
バカ…泣きたいのはこっちの方だって言うのに。
「…何故、そんなまどろっこしい事を?それに私は、確かに電波の発信を確認した」
茫然自失とするカゲロウに代わって愛機であるヴォルグが訊く。
「だってカゲロウは、仲間じゃんか!!!」
アキラが泣きながら大声を上げた。
それは小さなクロスファイトの会場によく響き、それにより一斉に注目が集まる。
御代カモンも、ぽかんと口を開けてこちらのやり取りを見ているようだった。
「多分、発信機を着けた犬がその辺をうろついてたんだと思う。…信じて貰えなくてもいい、でも、どうしてもお前に謝りたかった」
比較的冷静なタカシが眉をひくひくと動かしながら言った。
「……………………」
カゲロウは、床に視線を落として黙り込んだ。
だとしたら、だ。
裏切られたと思っていたのは、自分だけという事になる。
…本当に、
「とんだピエロだな…」
ぽつりと呟いた言葉はこれだった。
心の中に潜んでいた僅かな情が今、形を成して表れようとしていたのだ。
「…オレの方こそ、済まなかった…」
カゲロウはいつの間にか頭を下げていた。
横に靡いた独特の髪が垂れ下がる。
アキラが力無く首を振る。
「いいって…元はと言えば、オレたちが悪いんだし」
「…なあ、カゲロウ。図々しいかもしんないけど、また、オレ達を、仲間として迎え入れてくれるか?」
歯切れの悪い言葉で、タカシが許しを乞う。
ヴォルグの口が点滅した。
「…カゲロウ、仲間を…」
「……信じるさ。今度は、な…」
その答えを聞いて、2人の顔が一気に晴れた。
「ありがとう、カゲロウ!」
調子のいい人間だ、そう答えた瞬間にいきなり懐いてくる。



それを見ていたカモンとガルバーンは、何だかこちらまで晴れやかな気分になった。
「…ガルバーン」
「ん」
「やっぱ、仲間っていいな!」
「応ッ!」
カモンはカゲロウを見て安心したように笑うと、スバル達を迎えに行った。
 

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