novel

□守護者伝説 起3
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夕日が持つ独特の赤みは消え、
空は赤から紫へ、紫から青へ、
そして黒へと変貌を遂げつつあった。


周囲は木々がどよめいて
騒がしく音を立て、
まるで話しているようにも聞こえる。


ザーク、と名乗った
スキンヘッドの男は、

何か考える素振りを見せた後、
彼は自分で何度も頷いた。


「あんたら旅人だろ?
良かったら、来るか?」

突然の誘いだった。


「どこに…」

「オレたちのアジト。
こんな山んなかで野宿するよりかはまだマシだろ」


ライトが疑問を投げかけたが
彼はそれを即座に返す。





ライトが仲間を一人一人
順に見渡して詰め寄った。



「…どうする?」

「盗賊なら利用するに越したことはないでしょ」

リフィーが間を開けず答えた。

「私達の敵、ガルドについて知るのにいい機会じゃない」


確かにそうだ。
盗賊ならば民間人よりも
情報伝達が早いうえ
社会状況だって把握している。


先刻、町を壊したガルドについて知らないはずはなかった。


それに彼の言うように、
建物内のほうが山より安全だ。


選択肢はひとつしかなかった。




「行く。案内しろよ」


ライトはまだ警戒心を解いていないのか、角度によれば
睨みつけているように見える
目でザークを向いた。
























森の中、木々を掻き分けるように中を進んでいく。

足元に随分と放置されて長く育った草が、
頭には鶏の嘴のように鋭く
尖った木の枝が身体をつついて痛かった。



それが終えたかと思うと
家とは言い難い、洞窟―――と言うより、小さなほら穴が姿を現した。



「…野宿と変わんねーじゃん」

それを目を細めて見た後、
ピアナが早速愚痴をこぼした。


彼女の意見はもっともだ。



「んなコト言ったって、じゃあオメー家建てられんのかよ」

後ろを振り向かずザークが反論した。


それには流石に
誰も返すことが出来ず、
ただ黙って彼についていった。





















「おぉ、ボス!!」

「お帰りなさい、ボス!!」


ゴツゴツとした岩肌が
一面に広がる穴に入って間もなく、岩たちに負けないゴツい男たちが何人も出てきた。


明かりは松明(たいまつ)が
壁に50p間隔で点々と灯っているので暗くはないが、
そのゆらゆら揺れる光は
儚く、妖しげでありどこかに不安を覚える。


リフィーが目の焦点をザークの
タトゥーが目立つ頭にずらした。

「…ボスだったんだ」


腕を組んで彼女が言う。


それにはライトたちも
同様の疑問を持っており、
同じように彼を見る。



「言ってなかったか?」


彼が目を見開いて
そんなことを言う。

ライトは口を開かず
「言ってない」と首を縦に振った。



「ボスゥ、そいつら誰なんスか?」


酔っ払っているのか
顔が熟した果実のように赤い
団員がザークに尋ねる。



「旅人だってよ」

そう答えた後、
やはり寝不足なのか、
彼は大きなあくびをひとつして
体の筋を伸ばすように上へのびる。



それから彼は両手を大きく広げ
ライトたちに体を向け、
恐さの消えた満面の笑みを顔に広げた。



「ようこそ、盗賊ヴァルガへ。
今日は客人もいるし、
飲み明かそうじゃないか、な?」



彼が団員たちに目を向けた
それを合図に、
団員たちが声をあげ、樽に入った酒を天へ向かって高々とあげた。
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