novel

□守護者伝説 転3
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静けさの漂う、光のない暗い森…通称"魔森"へと、9人は足を踏み入れる。


進んでいると一見普通の森だが、明らかに普通とは違う空気が辺りを満たしていた。



「この木たち…一本一本、魔力があるわね」

リフィーが、辺りを見渡しながらつぶやくように言う。

「…なんか、気味が悪い…」

ピアナがぶるるっと体を震わせる。



道の途中には至る所に人らしき骨が転がっている。


リオンが言ってた通りだった。


恐らく、昔入り込んだはいいが出られなくなった人々の死骸だろう。


ただ、ここ最近では言い伝えが浸透してるのか、人の気配など感じなかった。


「ホントにここ、抜けられるの?」

ユルカが不安そうにリオンに尋ねる。


するとリオンはくるりと後ろを振り返り、銀髪をなびかせた。


「さぁ?恐らくここも人工的に造られた森だ…簡単には抜けられんだろう」


「人工的にって…まさか…」

イーグルが眉を歪める。


「ゲドーだろうな」

答えたのはリオンではなく、
シャドウだった。


彼は葉巻を口から抜き、
地面に落として鉄製のブーツで踏みつける。


そしてシャドウが再び歩みを進めようとした時、ある異変に気づいた。


「オイ。ザークとピアナは?」


そうだった。


そうこうして話しながら進んでいる内に、2人が姿を消していたのだ。


「やべぇ…どうすんだよ!!」

ライトがネルの手を握ったまま
辺りを見渡す。



一番先頭にいたリオンはぎりっ…と歯を食いしばると、前方へ向かって走り出した。


「おい、リオン!!!」

ライトが大声で呼びかける。


だが、彼はそれを聞かず、
とにかく前へ前へと向かって走っていた。



















森の中を散策していて、
ピアナは、仲間たちがいつの間にか消えていたことに気がついた。


「…マジかよ…」

辺りを見渡しながら、ピアナはつぶやく。


だが、視界に入ってくるのは禍々しい木々たちだけで、人の姿など見えそうにもない。


「はぐれたら終わりだって言ってたよな、アイツ…」


そう、つぶやいた時だった。


(ドクン)

心臓の鼓動が、耳に届いた。


だが、苦しみも、何も感じない。


(ドクン、ドクン、ドク…)

その鼓動は、時を追うに連れ
段々大きくなっていく。



怖い…彼女は素直に、そう思った。


その正体が、何だかわからなかったからだ。


その時、刀の鞘から、紅桜がぽろりと落ちた。



それを拾おうとした時、
彼女の意識は、暗い闇の海の底へ、沈んでいくような感じがした。



















ザークが仲間たちからはぐれたと気づいたのは、木々が覆われた空間に自分が放り出されたと知った時だった。


(はぐれたら終わりだ)

リオンの警告が、ザークの頭に響く。


「参ったな…」


彼はそう言いながら頭をぽりぽりと掻く。


と、その時、草木ががさがさと揺れる音と共に、仲間の一人が目の前に現れた。


ザークは、ほっと胸を撫で下ろす。


「なんだ…ピアナじゃねぇか。一体どうした…」


と、警戒心を解いたまま
彼女に近づいた時だった。


その刹那、彼女は妖刀正宗を握りしめ、ザークを一閃に斬り払った。



「……え…………?」

一瞬のことすぎて状況が理解出来ないザークの口から、血が溢れてたれ落ちる。


横目で見るピアナは、
いつもの彼女とは明らかに違っていた。


その一撃を喰らったザークは、
そのままばったりと
短い草の敷物の上に倒れる。


血が溢れ、そこに紅い海が出来た。




ピアナはそのまま、森の奥へ奥へと向かって走り出した。

人の血を受けた刀は、
紫色の嫌な光を放ってピアナの精神を完全に支配した。


鳥たちがばさばさと上空を飛んでいく。


その時、この事件があの組織の仕業だということに、気づく者は誰一人いなかった。
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