creation

□美女と野獣(スマイル)
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ガタァン!という激しい音と共に立てかけてあった椅子が倒れる。

灯りが少ない室内で、ウルフルンは苛立ちを隠せないまま部屋を彷徨いていた。


「うるさいよ!!何騒いでるんだい!!?」

マジョリーナにたしなめられた。

流石に響いていたらしい。

尻尾がせわしなく揺れている。

怒りとは違う、よくわからないもやもやの塊が胸の内に巣くっていた。

腹立たしい、のに、また会いたいと思ってしまうのは何故だろう。

鮮やかなピンクの髪を二つくくりにし、その色に見合った可愛らしいコスチュームを纏った14歳の少女。

5人いる少女戦隊プリキュアの中で、センターの彼女は一際目立っていた。

「クソがっ!!」

ウルフルンはまた椅子を蹴り飛ばした。

マジョリーナが何やら喚いているのが聞こえる。


だが、胸の内の思いがその声をかき消した。

瞬きをして彼女の姿を思い浮かべる。

彼女はまさに、変身した時のセリフ同様 「キラキラ輝く未来の光」 だった。

自分はこの世の中を闇、即ちバッドエンドにしたくて出陣している。


だが…

引きずり込んでしまいたくなるような愛しさがあった。

光と影は相容れない、しかし光があるからこそ影が存在する。

影は、いつしか光に憧れを抱いた。

キラキラ輝く彼女の顔が…眩しくて、やっぱり別世界の人間なんだということを思い知らされる。


あの笑顔を見ていると崩したくなる衝動に駆られた。

だからこそ、自分だけのものにしたかった。

その躰すべてを、飲み込んで覆い尽くしてしまいたかった。

体中に深く…骨の髄まで侵入して、ドロドロに溶かしてもう元に戻れなくなる位に。


自分色に染めてずっと傍に置いておきたかった。

触れさせてみたいし、触れてみたい。

泣かせてみたい、跪かせてみたい、求められたい。

恋慕と欲望が入り混じり、やがてそれが怒りに変わる。

この感情はどこから溢れ出るのだろう、地球の人間にも…存在するものなのだろうか。


人と大きく離れた自らの手を見て嘆いた。

せめて人であったなら。

少なくとも今ほど避けられることはなかったのだろうか…。

…出来れば、人で…彼女の側で、生まれたかった。


そしたらどうなるのだろう。

いじめられっ子といじめっ子のような関係となるのだろうか?


「ウルフルン!!何やってるんだい!!?
さっさとバッドエナジーを回収しに行きな、ジョーカー様に恥かかすんじゃないよ!!!」

「わかってるよクソババア!!!」

こちらも苛立っているらしいマジョリーナがまた怒りの矛先をこちらにぶちまけてきた。

自分のことは棚に上げて、と言いそうになったが、仕方ないから行くしかない。


いや、行きたい。

彼女に会いたいのだ。

星空みゆき、もといキュアハッピーに。

出陣だ…行こう。

欲望を、満たすために。
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